「京都の生協」No.71 2010年4月発行 今号の目次

京都教育大生協 巻本彰一理事長を訪ねて
学生や教職員のライフスタイルにあった生協をめざして

 京都教育大学は、教員育成を目的とする大学として、歴史を重ね、京都や伏見という地域に根ざした社会的・文化的環境、豊かな自然環境、人文・社会・科学や芸術・体育など多様な内容が学べる教育環境を特色としています。キャンパス東部にある京都教育大生協を訪ね、巻本彰一理事長と羽賀省二専務理事からお話をうかがいました。


小林智子 会長理事

巻本彰一 理事長

  自然に恵まれたキャンパスで、教職をめざす学生

小林 自然に恵まれたキャンパスですね。

巻本 キャンパスの緑化率は高いです。地域にも開放していますから、春にお花見をしたり、毎朝キャンパス内を通って通勤する人の姿も見かけます。植物研究の実習として、学生が苗を植えたり水をやる姿もよくみかけます。

小林 京都教育大の学生たちの特徴はどうですか。

巻本 教員志望という特徴もあって、女子学生が多く、女子学生が100%という学科もあるくらいです。男女ふくめて、まじめな学生が多い。他府県出身者が多いことも特徴のひとつです。
 仕送りのない学生も少なくなく、授業が終わるとそのままアルバイトに行く学生がかなりあります。また、卒業までに二つの教員免許を基本的にとる必要があるので、必修の履修単位数も多く、高校の時間割のように授業もびっしりつまっています。そのせいか、自分たちのことを学生じゃなく、「生徒」とよんでいます。(笑)
 資格取得志向が高いのも特徴で、たしかに資格があることはよいことでしょうが、もっといろいろな経験をしてほしいと思いますね。広い視野をもつことも大切ですから。


  09年度から、理事長に就任

小林 理事長になられて、いかがですか。

巻本 昨年6月に、10年ちかく理事長をされていた平石隆敏先生から引き継ぎました。以前から理事をしていましたので、理事長になったから急に何かが変わるということはなかったですね。でも、赤字になるのは困るなと思います。生協は、大学の福利厚生をになうものですから、学生・院生・教職員の大学生活を豊かによりよくしていかなければなりません。経費の削減などの努力で、昨年までの累積赤字が解消にむかってきています。


  出席率が高い生協総代会

小林 京都教育大生協の総代会は、出席率がとても高いですね。

巻本 昼休みに総代会を開催していることが大きいと思いますが、学外で保育などのボランティアもしているせいでしょうか、協力をするということがむりなくやられていますね。総代会だから来てくれというと、素直に応じてくれます。京都教育大の学生は、おとなしくて、まじめで古風というイメージがあります。

小林 学生委員会の活動はいかがですか。

羽賀 「受験サポート」に、いちばん思い入れが強いですね。自分も受験時に迎えてもらった経験があるからなんでしょうね。


羽賀省二 専務理事

巻本 京都教育大は、生協が手を出す余地がないくらい、学内自治がしっかりしています。自治会や学園祭委員会、献血デーの取り組みなど、しっかりやってくれています。大学と地域交流企画の「ふれあい伏見フェスタ」には、生協も企画参加をしました。
 生協としては、平和のピースナウ企画や大山乳業の見学といった企画をして、学生理事の社会的な勉強に役立ててもらっています。こういった企画がないと経験できないことなので、もっと深めたいと考えています。
 ただ、いまの学生は、ポスターを貼っただけでは来てくれないので、生協の取り組みをどうやって知らせていくかが今後の課題です。


  食堂の利用状況

小林 新聞でも大きく取り上げられていた大学生協による学生の消費生活実態調査では、親の経済状況も反映して仕送りが減少しているようですね。食堂の利用にも、影響が出ていますか。

羽賀 奨学金やアルバイトのみで生活している学生も多いのですが、さらに生活防衛として、ご飯だけを自宅から持参して食堂でうどんを買い足しておなかをふくらますという学生もいます。

巻本 卒業後、教職につくことをめざしているので、小鉢を意識してとるなど、食事の栄養バランスを考える学生も多いです。生協としても、カロリーだけでなく、バランスをどうとっていくかという宣伝の工夫が必要だと考えています。
 私が学生のときの生協のイメージは、「安かろうまずかろう」でしたが、いまは、それでは通用しない。品質も味もともなっての低価格でないといけません。


  購買部の利用状況

小林 購買部の利用はどうですか。

羽賀 コンビニでは、教員との連携で、授業で使う教材を取り扱っています。ただ、開講前後に利用が集中して、その後はほとんど利用がありません。在庫をいつまで持っているのかがむずかしい。「教科書共同購入」は、昨年はほぼ全員の新入生が利用しました。


  生協として役立つこと

食物学研究室と学生有志の作成した食堂の卓上メモ

小林 さきほど、生協は、大学の福利厚生の役割をになうとのことでしたが、一般の業者との競合で、生協の経営状況に影響の出ている大学も増えてきていますね。

巻本 一般の業者は、新規顧客の獲得をするために、安さなど思い切った条件を打ち出すことがあります。しかし、契約を更新する際に、こんどは値上げを通告してきます。長期的にみると大学のためにはならないと思っています。
 それにたいして、生協は最初から、「できる範囲」での提案をします。経費をおさえつつ、赤字を出さない範囲で、組合員の利益になる事業を思い切っておこなっていくということが大切だと思っています。それが生協の強みだと思います。
 問題は山積みですが、学生・院生・教職員のそれぞれのライフスタイルにあった事業をすすめることのできる生協にしていきたいと思います。また、生協をもっと利用していただくために、生協の取り扱っている商品・サービスを広くアピールする必要もあると思っています。

小林 京都教育大生協が学生・院生・教職員とともに、まじめに実践されている取り組みから、きょうはたくさんのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。


京都教育大学生活協同組合
代表者 理事長:巻本彰一
専務理事:羽賀省二
所在地 京都市伏見区深草藤森町1
TEL.075-644-8355
事業高 2億4,730万円
組合員数 1,999人
設立年月日 1966年2月3日
ホームページ http://kyokyo.u-coop.net

 京都教育大学は教員養成を目的とする大学として歴史を重ねてきたが、大学環境が急速に変わりつつある。大学と地域の交流をめざした「京教市民合唱団」の活動が注目される。