「京都の生協」No.85 2015年1月発行 今号の目次

京都高齢者生活協同組合くらしコープ
時代の先端を協同と連帯で…魅力ある生協活動

 2014年2月4日に設立、8月に新しく京都府生協連に加入された「京都高齢者生活協同組合くらしコープ」。岡本康理事長と長誠一郎専務理事に、せいきょう会館において、お話をおうかがいしました。
(聞き手:京都府生協連専務理事・横山治生)



京都高齢者生協くらしコープ
長誠一郎専務理事

京都高齢者生協くらしコープ
岡本康理事長
  任意団体から生協を設立


横山治生専務理事

横山 生協の設立までの経過についてお聞かせください。

岡本 最初は任意団体として2002年に高齢者協同組合・くらしコープが発足しました。設立前には準備会のよびかけで井上ひさしさんの講演会を京都アスニーで開催し、会館はじまって以来のたくさんの参加者があり、盛り上がりました。当初は現常務理事の水口さん達が中心となり、京都府内産のお茶やお米などの供給事業をしていましたが、他の生協が産直事業をやっていましたので、同じようなことをやっても…ということで、福祉事業を中心に取り組むことになりました。

横山 やはり、集まってきているメンバーは高齢の方が中心だったのでしょうか。

岡本 そうです。文化的な要求とか、高齢者としての生きがいを求め、くらしを楽しむ活動を手探りで創りだそうではないかという希望をもっておられました。

  大学の先生方や文化人と呼ばれる方がたがたくさん参加されていたようです。その後、2002年8月には、介護事業をする企業組合(2年後、有限会社くらしコープに改称)を開設、2004年7月に仕事おこしと生活支援事業をおこなう、NPO法人くらしコープを設立、2つの事業をはじめました。

横山 長専務はいつから関わるようになられたのですか。

  以前の仕事を退職してから、知り合いに誘われて生活支援事業のワーカーとして参加するようになったのがきっかけでした。

横山 どんなお仕事をワーカーとしてされていたのですか。

  最初の仕事は、お医者さん宅の屋上にあった温室を解体する手伝いをしたのを覚えています。その後、事務所の仕事や、不要品処理、トイレのつまりなど現場の仕事をしました。組織の運営などについても助言をしているうちに事務局長をやることになり、NPO法人くらしコープに常勤として勤務することになりました。
その後、介護事業をしている有限会社が経営危機に陥り、当時、高齢者協同組合の代表世話人だった岡本康さんに相談したところ、「あなたが社長になって欲しい」といわれ、NPO法人くらしコープの事務局長と有限会社くらしコープの社長の、2つの組織の運営に、深くかかわるようになりました。

横山 高齢者協同組合・くらしコープの中にできた2つの事業が、生協設立へつながるのですか。

  そうです。組合員活動をおこなう高齢者協同組合と事業をおこなう2つの法人が別々に運営されており、このことが様々な取組みの妨げになっている。もう一度、高齢者協同組合設立の原点に戻って組織の再編をおこなうことが生協を設立するきっかけになりました。

横山 いろいろとご苦労があったように思います。

  くらしコープという名称は各組織名の末尾についていますが3つの組織に分かれて事業をしていたため、特に介護事業をしている有限会社くらしコープは、一般の介護事業所という見方になっていました。協同組合という意識がほとんどなく、職員の学習会も「協同組合とは」から始めなければなりませんでした。


  生協になってお互いの事業が支え合うように

横山 生協として様々な活動をしておられるようですが…

岡本 設立当初から文化的な要求に沿った多面的な活動を中心におこなっており、映画会、読書会、書道や絵手紙教室など組合員自身による自主的なサークル活動が旺盛です。しかし、それだけでは同好者の集まりで、広がりがありません。生活要求に沿った介護の仕事が定着し、根を張ってきたということです。ほかに庭の剪定や引越しの手伝いなど、いわゆるワーカーズの活動もおこなっています。

横山 ワーカーズに登録している方は何人おられるのですか。

  80人ほどです。そのうち、昨年度1回でも作業にかかわった方は50数人でしょうか。

横山 生協になってから何か変化はありますか。

  生協になってから活動の輪が広がっていると思います。以前は高齢者協同組合・くらしコープとNPO法人くらしコープ、介護事業者としての有限会社くらしコープの3つがそれぞれに活動をおこなっていました。生協として一本になることでお互いが支え合うようになり、「くらしの助け合いを広げ、安心と輝きの高齢社会をつくろう」というスローガンのもと、高齢者の要望をすべて取り上げる組織をめざし、いろんなことに取り組むようになりました。

横山 “くらしの便利屋さん”と呼んでいる生活支援事業ではどのようなニーズが多いのでしょうか。

  介護保険が改定され、訪問介護が1単位60分から45分になってから、掃除の依頼が増えました。45分の時間内では手が回らなくなっているのでしょうね。居住スペース以外の掃除も含めて依頼が増えてきました。他に庭の樹木の剪定など、高齢者の仕事おこしとあわせて困っている人たちの「くらしの便利屋」としての取り組みをおこなっています。私たちのできない仕事は専門の業者さんを紹介するなど困っている人を放置しない姿勢を大切にしています。

横山 介護事業の利用状況はどうでしょうか。

  組合員を増やすことが事業につながります。地域で組合員が増えれば将来は介護にもつながってくる。介護が必要でない間はワーカーとして参加したり、サークルや文化活動に参加したり、いろんな参加の仕方がある。参加して楽しめる生協活動をめざしたいです。

横山 組合員さんは生協の事業の担い手であり、利用者でもあるのですね。

  そうです。3つのスローガンにあるように、サークル活動やワーカーズで“元気な高齢者がもっと元気に”、介護の分野では“寝たきりにならない、しない”、そして“一人ぼっちの高齢者をなくそう”ということです。

横山 急速に進む高齢化社会のなかで、ある意味では時代の先端でお仕事をされているのですね。


  会員生協同士で力を合わせることが大事

岡本 最近では、共同墓をつくってほしいという声もでてきています。お墓の面倒を見る子どもがいないなど、いろんな動機があるようです。共同で墓地を借り、供養塔を作って永代供養する、生協の墓地でしょうかね。死後も寄り添っていきたいという気持ちもあるようです。また京都には外国人が多く、留学生や外国人教員もたくさんくらしています。そういう人たちにどのようなサポートができるかも課題かと思います。

横山 大学生協も留学生のための食事やサポートなどをしています。協力して、取り組めるといいですね。

  今後のことを考えるといかに生協同士が提携してやっていくかだと思います。それぞれが得意な分野を活かし、力を合わせることが大事になっていると思います。この間、京都府生協連の会員生協と介護福祉関係で学習会をしたり、京都府との懇談の場に出席しました。同じテーマで協力できることもたくさんあると思います。


  高齢者の知的生産の継続が課題

横山 高齢者生協というとお年寄りの集まりで細々と地道にやっているというイメージがありましたが、時代の先端を協同と連帯で、魅力ある活動をしていらっしゃるのですね。

岡本 生協を定年退職した人が時間に余裕ができても自宅にいるだけではもったいない。ぜひ高齢者生協に参加してほしいです。大学の先生も退職して家に引きこもっている方も多いので、その知識を継承し、活用していく事など、高齢者が知的生産を継続できるようなとを考えてほしいですね。

横山 本日は、どうもありがとうございました。


京都高齢者生活協同組合くらしコープ
代表者 理事長:岡本 康
専務理事:長 誠一郎
所在地 京都市北区紫野東野町1番地5
TEL.075-432-3636
組合員数 522人
設立年月日 2014年2月4日