「京都の生協」No.89 2016年4月発行 今号の目次

立命館生活協同組合
~佐藤敬二理事長に聞く~

 立命館生活協同組合は創立50周年をふまえて、新しい半世紀に向け「組合員の学園生活の文化的・経済的な状況を改善し、また向上し続けること」を使命とし、日々キャンパスで活躍されています。今回は立命館生協・佐藤敬二理事長を訪ね、お話を伺いました。
(聞き手:京都府生活協同組合連合会専務理事・高取 淳)



立命館生協・佐藤敬二理事長

高取 佐藤理事長は生協にかかわられてどれくらいでしょうか?

佐藤 生協の役員になったのは理事長就任が初めてで、2年目になります。入学時から大学生協の組合員ですので、その意味では生協にかかわって36年になります。

 理事長に就任したのは、前任者から就任の依頼をいただいたことがきっかけでした。依頼は基本的にはお引き受けするようにしています。依頼していただいた方が「やれる」と判断されたのだと思いますので、それを尊重しようと考えているからです。

 私に依頼をされたのは、理事長就任前まで大学の学生部長を含めて通算で7年間、学生部の役員をやっていたためだと思います。学生部は生活面を含めて学生を援助、支援する部局ですし、生協と懇談もしておりましたので、理事長に就任しても大丈夫だと考えられたのでしょう。


  総代会を大切にした運営

高取 立命館生協の特徴をお聞かせください。

佐藤 立命館生協は8つのキャンパスに35のショップで事業を展開しており、供給高は全国でも3番目の規模となっています。2015年度新入生の生協加入率は98%を超え、全体でも95%と、大半の学生、院生、教職員が加入しています。

 いまの学生はあまりキャンパスから外に出ません。1日中キャンパスの中にいて、講義に出席し、課外の活動をおこないます。ですから食事の面はもちろん、購買や旅行の手配などもかなり生協がカバーしていると思います。そういう意味では、生協の役割はますます大きくなっていると思っています。朝食を食べて朝から講義を受講しようということで100円朝食を始めたのもその一環です。

 立命館大学は、大学全体の方向性を議論するため、全学協議会という、理事会と学生、院生、教職員が集まって議論する場を設けています。そこには立命館生協もオブザーバーで参加しています。立命館生協も学生の生活支援をおこなうひとつのパートとして位置づけられていると考えています。

 学生たちは、生協学生委員会(GIと称しています)を組織しています。立命館生協のGIは現在約200人おり、3キャンパスでかなり積極的に活動しています。現在であれば、新入生歓迎の活動として、自宅生説明会・下宿生説明会、ウェルカムフェスティバルなど多様な形態で新入生の不安にこたえようとしています。日常的にも、学生が困っていることに対応した企画や、健康や食育にかかわる活動をおこなっています。また、総代会を大切にしているのも特徴です。総代会前には、総代さんに集まってもらっての学習会、総代会後にはフォロー企画をおこなっていますし、今後、総代さんがもっと主体となった活動も検討しています。


  大阪いばらきキャンパスの3つのコンセプト

高取 昨年、新しく大阪いばらきキャンパスを開設されたということですが、キャンパスのコンセプトが、まちや地域との調和とされているとお聞きしています。

佐藤 大阪いばらきキャンパスは、アジアのゲートウェイ、地域・社会連携、都市共創(都市を共に創る)の3つのコンセプトで作られています。1つ目のアジアのゲートウェイでは、世界、とりわけアジアとの窓口として、研究者を受け入れ送り出し、留学生を受け入れ送り出し、学術のキーステーションとなろうとしています。2つ目の地域・社会連携では、実際にキャンパスを見ていただければいいのですが、塀が一切ありません。色々な方が地域開放型の施設やショップを利用されたり、隣が公園ということもあり子どもたちも遊びにきたりしています。
キャンパスの中はホールもありコンサートもできますし、茨木市商工会議所もキャンパスの敷地内にあり、地域・社会連携の役割を果たしています。3つ目の都市共創では、都市を共に創ろうという研究センターができていて、連携だけでなく、ここから発信して共に創っていくというコンセプトを持っています。キャンパスの中も、コモンズ(共有地)という誰でも使える共有の場所があらゆるところにあります。学舎中央に100mの廊下があり、色々なところにディスカッションできる場所やフリーに使えるスペースがいくつもあります。そこから何かを創っていこうということをコンセプトにしています。

高取 その中で生協はどんな取組みをされているのでしょうか。

佐藤 生協の取組みはまだまだこれからだと思っています。アジアからの留学生の関係でいうと、対応する職員の言葉の問題や、ハラル(※)の問題もあります。(※イスラム圏では宗教上、口にしてはいけないものをハラムといい、逆に口にすることが許されたものをハラルといいます。)APU(立命館アジア太平洋大学)にある生協のカフェテリアでは、ムスリムフレンドリーの認証を受けて食事提供をしており、ムスリムフレンドリー認証をうけたカフェテリアとしては最大規模のものとなっています。立命館大学のキャンパスでも取組んでいく必要があると考えています。

 地域・社会連携では、大学のゼミと連動していくつか取組みを進めています。京都のキャンパスでは例えば、京北町の方々と連携して、商品を販売したり、食堂メニューに京北のものを使用したりしています。茨木のキャンパスでも丹後マルシェを開催しています。茨木市の産品を使ったメニューを提供したり販売したりもしていますが、都市共創、コモンズの有効活用などはこれからの課題ですね。

高取 近隣の地域と学生が共にする活動はありますか。

佐藤 地域と学生が一緒にできるような活動も進めたいと思っていますが、まだまだこれからですね。ただ地域の方たちには若い方も多く、何かやりたいという思いは持っておられて、2015年度に大阪いばらきキャンパスで開催した学生団体によるコンサートでもかなりたくさんの方が来られています。


大阪いばらきキャンパス

  組合員の声にこたえて

高取 大阪いばらきキャンパスのショップの特徴はなんでしょうか。

佐藤 カフェテリアは、営業時間外にはコモンズとして利用できるように設計されていることもあり、いろいろなイベントがおこなわれたり、学生や地域の人々のたまり場になっています。

 キャンパスにはコンビニや一般のレストランもあり、当初から生協のショップでは飲料や食料品などコンビニで取り扱うものは扱わないということでスタートしました。そのため生協のショップは文具や書籍を扱うだけにしていましたが、昼食時のコンビニの回転が悪く、困った学生や教職員から生協でも飲料や食料品を扱ってほしいという声が強く出されました。そこで、キャンパス開設1年目ですが改装を進め、4月から新たに生協のミールショップを開設して組合員の要望に対応できるようにします。カフェテリアも価格の安さと栄養面から大混雑しており、生協が頼りにされていると感じています。


  これからの大学生協

高取 佐藤理事長が生協に関心をお持ちのことは?

佐藤 生協というのは、組合員が自分たちで何か作っていけるところがおもしろいところだと思いますし、協同が形にできるところが魅力だと思います。学生がフェアトレードの商品を持ち込んで食堂メニューにのせたり、ショップで売ることなどもあります。これらは一例ですが色々なことが生協を通じてできるのではないかと思っています。

高取 これからの役割や抱負などお願いいたします。

佐藤 やはり大学の生協ですので、様々な学びの支援をしっかりやりたいと思っています。今年度から開始したエクステンション事業(資格講座)のような事業だけでなく、読書会やビブリオバトルなど生協としておこなえる学びの支援は色々と考えられます。また生協の職員も大学で働いているのですから教育者であるべきだと思っています。今も、店長さんなどはよく学生と話をしてアドバイスもされており、教育的なことも少しはできているかなと思っていますが、そのような姿勢を涵養していくことが重要だと思っています。

高取 本日はお忙しい中をありがとうございました。


立命館生活協同組合
代表者 理事長:佐藤 敬二
専務理事:酒井 克彦
所在地 京都市北区等持院北町56-1
TEL.075-465-8280
事業高 62億3,587万円
組合員数 4万7,501人
設立年月日 1962年6月14日
ホームページ http://www.ritsco-op.jp/