厭戦の歌――「戦友」

2010年08月02日

100802_sennyuu.jpg「ここはお国を何百里 離れて遠き満州の 赤い夕日に照らされて 友は野末の石の下」を第1連として始まるこの歌を口ずさめる人も、かなりの年齢にさしかかっていよう。ジャンルからいえば軍歌ということになろうが、内容でいうと歌詞もメロディーも亡き友への切々たる鎮魂であり、その底流に「厭戦」の感情がある。作詞家は真下飛泉(ましも ひせん)、現在の福知山市大江町河守(こうもり)の出身で、与謝野鉄幹が主催する新詩社に入って京都支部事業所を担当した。題材は日露戦争であり、この歌詞ができる前年の明治37年に、与謝野晶子は「君死にたもうことなかれ」と歌った。写真にあるように、故郷の宮川の畔に歌碑が建てられている。歌詞は14連からなる。昭和に入ってからは、4連目の「軍律きびしい中なれど これを見捨てて置かりょうか しっかりせよと抱き起こし 仮繍帯も弾丸の中」が「硝煙渦巻く中なれど……」に改編され、しだいに歌うことじたいが禁じられた。8連目は「空しく冷えて魂は くにへ帰ったポケットに 時計ばかりがコチコチと 動いて居るも情なや」――はげしい戦闘のあとに訪れる静寂のなかで、持ち主の死とは無関係に時を刻みつづける音が聞こえる……。感情は失われ、モノだけが存在している。<写真:真下飛泉の歌碑>(2010年8月2日、坂本茂)