「京都の生協」No.101 2020年4月発行 |
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京都工芸繊維大学生活協同組合
~塩野剛司理事長と林章司専務理事、藤井博史常務理事に聞く~ |
松ヶ崎に位置する京都工芸繊維大学は、2019年に開学120周年、創立70周年を迎えました。生協は2010年にリニューアルしました。
今回は京都工芸繊維大学生協に塩野剛司理事長(京都工芸繊維大学材料科学系教授・工学博士)をおたずねしました。
林章司専務理事と藤井博史常務理事にも同席いただきました。
(聞き手:京都府生協連合会専務理事・高取淳)
![]() KITHOUSEの前で (左から)藤井博史常務理事、塩野剛司理事長、林章司専務理事 |
高取 京都工芸繊維大学についてお聞かせください。
塩野 本学は、1899年設立の京都蚕業講習所と、1902年設立の京都高等工藝学校を前身として、1949年に新制大学として設置され、2019年に開学120周年、大学創立70周年を迎えました。伝統文化の源である京都の中で、知と美と技を探求する独自の学風を築きあげてきました。京都高等工藝学校は設立当初、京都大学吉田キャンパスにあったとのことです。わたしも京都工芸繊維大学出身です。
林 古い文献を見ると、一緒になる前の2つの大学にそれぞれに生協があったようです。ただし法人化はしていなかったようで、1971年に京都工芸繊維大学生協が設立されました。
理工系の大学生協として |
高取 生協の概要についてお聞かせください。
塩野 大学生協は1971年設立で、わたしは1976年に入学しているので、わたしの学生時代から生協がありました。生協とのかかわりは長いのです。
藤井 2018年度では、組合員数は4240人、供給高は5億3千万円です。キャンパスは、前身の京都蚕業講習所があった嵯峨キャンパスと、一昨年に新しくできた福知山キャンパスがありますが、生協の店舗があるのはこの、松ヶ崎キャンパスだけです。生協があるこのKIT(※)HOUSEは、2010年にリニューアルしました。大学60周年の時に学内の建物を建て替えた際に、食堂と購買部を一緒にし、現在の施設ができました。
塩野 当大学の一つの特徴ですが、デザイン・建築系の課程があるので、学内の建物も大学内の先生により設計されたものが多いです。
藤井 KITHOUSEは、当大学の岸和郎名誉教授が設計されたものです。食堂のディスプレイも学内のデザイン学の先生がデザインされたものです。 本学の生協の特徴として理工系単科大学なので、購買では、取り扱っている物も多岐にわたります。
塩野 普通のところにはないものが結構多いですね。
高取 学生のみなさんは京都出身の方が多いのですか?
塩野 確認したところ、京都が一番多く、それに次ぐ勢いで大阪が多い。ツートップの状態です。わたしの研究室で一番遠いのは沖縄の学生がいますし、北海道からの学生もいます。
高取 学生のみなさんも夜遅くまで研究されているのですか?
塩野 泊りこんでいる学生もいます。特に今の時期(2月)は泊っている学生がいますね。
1回生から3回生までは自宅から通学していて、4回生になって下宿する学生が時々います。立派な学生館が近くにあり、そこを利用している学生がいます。
組合員のくらしを支える |
高取 生協の事業としては食堂と購買が中心になると思いますが。
藤井 理工系なので、建築などの材料を購入されることから、金額的には、購買系が大きいです。新入生の時に、パソコンサポートやソフトなどもあり、利用されています。
高取 食堂事業はどうですか?
藤井 食堂は昨年度供給高が落ちたのですが、今年度は盛り返しています。8時15分から20時30分まで開けています。夕食メニューなども提案したりして、よくご利用いただいています。
林 研究される方も多く、利用者側からは長時間営業が求められますが、人材(職員)の確保が大きな課題です。
研究者として |
高取 理事長になられたきっかけをお聞かせください。
塩野 前理事長の浦川先生から理事に誘われました。その後、理事長にとお話をいただきました。学生の時から生協を利用していたので、ボランティア的なイメージを持っていました。理事長となり立場が変われば、事業についてはもう少し黒字になる経営にしてはどうかなと思っています。
高取 塩野理事長のご専門についてお聞かせください。
塩野 焼き物、セラミックスなど、窯業と言いますが、大きなグループを作って研究しているのは、東工大と名工大と我々のところぐらいだと思います。窯業の中でも、もろさを克服しようという研究をしています。例えば耐火煉瓦と言って、高い温度で使う煉瓦です。実は中国で煉瓦をやっているとエリートと言われます。もうひとつの柱は、もみ殻から新しいものを作る研究です。もみ殻の中にはシリカが20パーセント含まれており、もみ殻を燃やすとシリカは95パーセントになる。タイではもみ殻を使って発電しています。もみ殻を燃やしてその熱を使う。生成したシリカは建材材料として利用できる。日本の土壁は湿度を調整できて優秀で、シリカはその材料になります。土壁の見本がありますから、一度持ってみてください。とても重たいです。このような京瓦や土壁の研究、伝統工芸的な勉強もしました。京瓦では知り合いになった方から、毎年干支の瓦もいただいています。あまりみなさんのやらないことをやっています(笑)。
学生の育ちの場としての生協 |
高取 新しいものを作り出すという、工繊大の校風ですね。
では、学生委員会の活動についてご紹介ください。
塩野 理事長をするまで、生協というのは食堂と購買部だけの事業をしていると思っていました。理事長になって、学生委員の活動範囲が広いことに驚きました。他大学もこんなにやっておられるのかと思うくらい、活動範囲が広い。学生委員が一生けんめいやっておられるのを見て、驚きました。
藤井 学生委員会は40人くらいいて、元気に頑張っています。新入生のサポートや、店舗活動を盛りあげたり、健康と安全を守る共済活動を紹介したり、お祭りなどのイベント活動を開催したり、機関誌も年4回発行しています。デザイン系の学生も入ってクオリティの高いものを作っています。学生は忙しくて大変そうですが、合間を縫って頑張っています。
塩野 理事会に出席して思うのは、生協の学生さんは元気だと思いますね。理事会で審議をした時に、上の学年になるほど、自分の意見をしっかりと言える。普段の授業では、今の学生は自分の意見を口に出して言えなくなっているような風潮があると感じています。
高取 学生委員のみなさんは活動の中で、社会人と接することが多いことも関係しているのかもしれませんね。新しく学生委員になられる方はどんなきっかけで、参加されるのですか?
藤井 「誘われて」というのもありますし、AO入試の合格者へ大学が入学前授業をする際に、学生委員がサポートするのを見て、「自分もお世話になったので、次の入学生には自分がお世話をしたい」と入ってきてくれます。良い連鎖が広まっています。
これからも身近な存在として |
高取 これからめざすことは?
塩野 物言う株主ではないが、財政基盤的なことを大学へも言って行かないとダメだと思います。学生さんにとって身近に感じてもらえる店舗・食堂をめざしたい。利用者の立場でも理事の立場でも愛される。そして、生協に行きたいと思ってもらえる生協をめざしたい。
高取 本日はありがとうございました。
※KIT(京都工芸繊維大学):Kyoto Institute of Technology
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