「京都の生協」No.102 2020年8月発行 今号の目次

  退任あいさつ 生活文化の向上(幸い=人間の自由)と生活協同組合

上掛利博

会長理事として8年間お世話になりました。京都生協の理事を10年間、京都府立医大・府大生協の理事長などを5年間経験してましたので、地域生協と大学生協の両方を経験した人は少ないので是非に、と説得されてお引き受けしたという経過があります。

10年前の京都府生協連の理事会は、前向きに参加をしたくなるような雰囲気ではありませんでした。そこで私は、次の3つのことに心掛けて、「参加して良かったと思える理事会」にすることが大事ではないかと考えました。

1つは、参加して「いやな思い」をしないようにするということで、理事会やKSKの時に京都の和菓子を準備して、みなさんに「ほっこり」していただけるようにしました。島根(松江藩主の不昧公のもと茶道が盛ん)の生協が、お茶菓子を出して良い議論をしていると聞いたことがあったからです。

2つめは、お菓子で「お茶を濁す」ことにならないよう、毎回「新たな学び」があって「ためになった」と思っていただける理事会にしたいと考え、開会あいさつのなかで、興味深い映画や本、雑誌や新聞記事などのコピーを配布して紹介できるように、日常的に準備をしました。

3つめは、京都は「『学生のまち』京都」で歴史的にも「学生さん」を大事にしてきた土地柄ですから、そのことを踏まえる必要があるのではと考えました。私の専門は「福祉」(=人間の幸福)で生協が目指すところと同じですし、北欧ノルウェーのことを研究対象にしてきましたので国際比較の観点からいろいろ考えてきました。加えて「くらしと協同の研究所」の研究委員長を10年間担当したり、協同組合学会などを通じて協同組合の動向についても学んできたりしました。そうして得ることのできたことなども、理事会などを通じて会員生協のみなさんに役立てたいものだと願ってきました。

以上、「ほっこり出来る理事会」「新たな学びのある理事会」「『学生のまち』京都の理事会」というのが、京都府生協連の会長理事としての私の立ち位置です。

理事のみなさんから、「こんなお菓子は知らなかった」とか「映画や本の話が楽しみです」と言っていただけるようになり、「参加して良かった」と思える雰囲気の理事会に少しは出来たのではないかと思います。もちろん、生協連の運営にあやまりがあってはいけませんので、会長・専務会や常任理事会で細心の注意を払い運営内容を改善するようにつとめました。

数あるあいさつの機会でも、毎年の新年交歓会には力を注ぎました。7分間2800字の原稿を書いて臨みましたが、「ずいぶん準備に時間がかかったでしょう」「今まで聞いたあいさつのなかで一番良かった」「これを聞くのが楽しみで来ています」と言っていただけるようになり、参加いただいたみなさんとのつながりづくりにも貢献できたのではないでしょうか。

また、日本生協連関西地連の会議でも、京都府生協連の理事会で普段お話ししている視点に立って、みなさんが話しやすいような問題提起をして議論の「口火を切る」ように務めました。日本の生協運動のなかでの「京都」の役割を果たしたいという願いがあってのことです。

『京都の生協』の対談は、24回にわたって多方面の方に登場していただき、興味深い対談内容にすることでみなさんに楽しんで読んでいただけるように工夫しました。そして、いろいろな場面でお会いする方たちにもお渡しして、これまで生協と関係がなかった分野のみなさんにも読んでいただき、生活協同組合への理解を広げる一助にしたいものだと考えました。京都府庁で働いている卒業生からも「回覧で毎回楽しく読んでいます」とか、ある大学の名誉教授の先生からは「まとめて本にしないのですか?」という声も届きました。

21世紀、コロナ後の世界では、人間が「自由に生きる」(=幸い)ということをどのように考えるのか、「文化的な生活の向上」をめざす生活協同組合の出番になると思います。この目標に向かって会員生協のみなさんのさらなる発展をお祈りして、退任のあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。