「京都の生協」No.45 2002年4月発行 この号の目次・表紙

組合員とともに
高齢社会を迎え組合員の期待に応えて広がる福祉事業

「お互いさま」の精神を柱にした助け合いと共助の組織として

全国で広がる福祉事業
 全国の生協の福祉活動、及び福祉事業の特徴は組合員の福祉活動として「くらしの助け合い活動」が広がっている。これは、毎日の暮らしの中で、困ったこと(例えば、買い物、掃除、食事づくりなどの家事援助、コミュニケーションの活動など)がおきた時、「お互いさま」「近所三軒両隣助け合って」の精神で組合員どうしが助け合う活動である。会員数(活動会員、利用会員、賛助会員)が60388名まで広がっている。
 これらの組合員参加の活動が、介護保険事業のたちあげや福祉事業を成功させるうえでの信頼のベースになり、活動の蓄積、生協への信頼関係とサービスのきめこまかさが大きな相乗作用を生み、福祉事業広がりの基盤になっている。2000年度以後福祉事業に参加した生協は40生協になり、事業高は30億に到達し、2001年度は45億の事業規模になる見込みである。

京都のとりくみ

平田先生の往診(やましろ健康医療生協)
 やましろ健康医療生協は訪問看護ステーション、ホームヘルパーステーション「サポートゆう・ゆう・ゆう」を開設し、2000年度の事業では、あさくら診療所で居宅介護支援、居宅療養管理、通所リハビリをとりくみ、訪問看護ステーションでは居宅介護支援、訪問看護事業をおこなっている。これらの年間利用者は345人、利用回数は1697回、ケアープラン作成は244件になっている。ヘルパーステーションは、利用者495人、利用時間13716時間、ケアープラン作成167人に到達した。ケアープランは3事業所でそれぞれおこなわれ、現在、月平均80名のプランになっている。介護事業高は6910万円に到達している。
 乙訓医療生協の年間事業は、通所リハビリが3846件、ヘルパー利用者5355人、訪問看護事業881件、ケアープラン作成は1527件になっている。これらの介護事業高は6288万円になっている。訪問介護事業は組合員の要望に応え、事業の確立をはかったことが成功への要因になっている。
 京都共済生協は、福祉への貢献事業として、ヘルパー3級講座を年3回おこない、のべ9回開いてきている。今年は,より実践的な人材を養成しようと、2級講座を開講した。

地域の配食・会食活動も広がっている
 京都生協の福祉事業は訪問介護事業の利用人数では、年間、介護保険1168人、オリジナル260人で計1428人、利用時間は介護保険とオリジナルをあわせて、20628時間になっている。事業高は訪問介護、居宅介護支援事業、要請講座をあわせ6092万円に到達した。2001年度は昨年にくらべ利用人数および時間は、月毎ほぼ2倍の伸びとなってきている。
 この成長の要因は日々の商品事業のつみあげ、地域でのくらしの助け合い活動への信頼の力によるものといえる。人材養成のための2級ヘルパー講座は8回目を迎え、修了者のうち220名が、ホームヘルパーへの活動登録をおこない138名が活動(事業)に参加してきている。また通常の事業の中でおこなってきた、個人宅への商品配達事業(高齢者宅へは割引サービス)、介護用品の店(ウエル衣笠)での福祉用品の相談や購入、レンタルなどへの利用も高まっている。

現場からみえてくる高齢者の生活、福祉事業の現状と課題
1年間の福祉事業の取り組みから浮かび上がってきた問題点と課題は次のように整理ができる。
(1) ヘルパーの問題では、有資格者はふえてきているが、仕事量の関係では実際働く人は不足している。その背景には、賃金条件の不安定な問題、生きがいなどの目標がもちにくいなどが指摘されている。一方、事業的には、登録制でおこなわないと、事業損益が成り立たないため常勤制は取れない。そのことによるヘルパーの職場移動が始まっており、仕事や職場の質の向上が課題となってきている。また、質を高めるために、経験の積み上げだけではなく、「人材づくり」とともに教育の仕組みをどうつくっていくかも大きな課題となってきている。
(2) 利用者の課題としては、介護認定は受けたが、家計のきびしさから100%利用できないケース(実質70%)が多く発生し、「1割負担が重く、制御せざるをえない」との声に、行政はどう対応するか、また特別養護老人ホーム、老健施設などの福祉施設の未整備なども大きな課題となっている。
(3) 制度の問題として、ヘルパー事業の身体介護の単価に対して、家事援助が正当に評価されず、報酬単価が低すぎることなど介護保険の見直しが必要。
(4) 事業課題として、利用者がふえ、きめ細かい対応をしようと思えば、適正な事業所規模、体制が大きな課題になっており、その研究も課題となっている。
(5) 福祉はもともと、ヒューマンなものであり、経営原理で割り切ることができない部分が多い中で、共助の力でどこまでフォローできるのかが問われている。
(6) 今度、生協らしさを事業にいかし、特徴をどうつくるのか、日常の事業の中に、どう生協の付加価値をつけるのか、施設福祉への要望も強く研究課題となっている。今後の生協の活躍に注目があつまっている。

第1回 京都府生協連 居宅介護支援事業交流会開催
 介護保険制度がスタートしてから1年半。この制度は利用者や事業者から見て、多くの課題、問題をかかえている。
 12月19日、生協がとりくむ居宅サービス、居宅介護支援事業の課題や問題点などについて京都生協、乙訓医療生協、やましろ健康医療生協の介護事業にたずさわっている職員の交流会が開かれた。
 介護を必要としている人に対して生協はどのような視点で、生協らしい取り組みをおこなっているかなど報告された。「介護保険から外れている部分をどうするのか」「地域福祉のネットワークづくり、生協同士の資源をどうお互いに活用できるのか」など事例を出し合い、交流。「人材づくりやヘルパーの育成研修は大きな課題、行政の研修制度だけでなく、生協の自主的なしくみが大切だ。生協らしい福祉活動をみんなでつくっていこう」などの意見交換がおこなわれた。

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