「京都の生協」No.49 2003年8月発行 この号の目次・表紙

食品安全の社会システム確立へ、大きな前進
〜食品安全基本法・食品衛生法改正法公布〜




自由民主党・奥山茂彦衆議院議員へ要望
JA京都女性協・大村会長とともに(1/18)

民主党・山井和則衆議院議員、松井孝治参議院議員へ要望(1/27)
日本生協連理事会食品安全運動推進小委員会は、このほど「食品安全運動のまとめ」を発表しました。その一部を掲載します。

 私たちの5年がかりでの運動は、食衛法改正にとどまらず、食品安全基本法の制定、食品安全委員会の設置等、日本の食品安全行政の「大転換」ともいうべき画期的な前進を実現できました。

 食品安全基本法については、第1に食品の安全性確保に関する包括的な法律として制定され、法の基本理念に食品の安全性確保は国民の健康保護が最も重要である旨が規定されたこと、第2に国・地方公共団体・食品関連事業者の責務と消費者の役割が規定されたこと、第3に食品安全行政にリスクコミュニケーションも含めたリスク分析手法の導入が明記されたこと、第4に新しい行政組織として食品安全委員会が設置され、委員会への消費者の意見反映や専門調査会への消費者の声を代表する者の参加が実現されることとなったことです。この他、施策の策定に当たっての国民への情報提供・意見交換の促進や、委員会の機能・権限として関係省庁への勧告等が規定されました。

 食品衛生法については、生協の国会請願の多くの事項が取り入れられました。第1に法の目的に国民の健康保護が明記されたこと、第2に国・地方公共団体や販売業者の責務及び国民からの意見聴取が規定されたこと、第3に残留農薬等のポジティブリスト制の導入や、安全性に問題のある添加物について既存添加物名簿から削除することが規定されたこと等です。また、農薬取締法や飼料安全法、と畜場法等の法律も改正されました。


日本共産党・西山とき子参議院議員へ要望(2/1)
 なお、今回の一連の法制定・改正による食品安全行政改革は、法制度の枠組みの改革です。今後、この枠組みを生かした、運用面での実効性の確保が極めて重要な課題となってきます。

 また、この間の経過は、生協にとっても事業上の大転換を迫られるものでした。BSE問題の発生以降の一連の偽装表示事件の発生のなかで、生協も数多くの偽装表示等の問題を発生させました。

 産直の取り組みも含めて、優良誤認につながる表示や商品・事業管理のあり方が問われ、組合員や社会への情報開示とともにコンプライアンスとしても深刻な総括と改革が迫られることとなりました。

 その後の生協の真摯な取り組みのなかで、社会的な理解が改めて広がり、組合員の間にも生協の商品・事業管理のあり方がどうあるべきか、食品の安全性や表示を巡る現在の社会システムへの理解が広がりました。


近畿農政局・山田啓二消費生活課長(当時)
 京都府生協連は、2003年5月26日、吉田智道会長理事名で、京都府知事はじめ、地元選出国会議員、議会関係者の方がたなどへ、食品安全基本法・食品衛生法改正の成立にあたっての御礼文をお届けしました。一部を掲載します。

  4月22日(火)、せいきょう会館で「『食の安全』はどこまですすんだか」と題して、食の安全の取り組みふりかえり、到達点を確認するための学習・交流会を開催し、約30名が参加しました。

 農林水産省近畿農政局消費生活課課長山田啓二さん(当時)より、「あらたな食品安全行政をめざして?農林施策について」と題して報告いただきました。

 つづいて日本生協連食の安全推進担当北村洋さんが「『食の安全』?いま国会で論議されていること」を報告し、法整備の状況についての理解を深め合いました。

〈資料〉食品安全運動の経過
国・国会等の動き、社会的な動向 生協の取り組み
1999 ●埼玉県所沢産茶葉から検出されたダイオキシンに関する報道による風評被害発生(2月) ●日生協理事会「食品の安全を確保する法・制度確立の運動」提起(5月)
●食品安全行政の抜本的充実・強化を求める国会要請署名(4項目)開始(7月〜2000年3月)※5900団体、56万筆集約
2000 ●雪印乳業製造の加工乳による大規模食中毒事件が発生(6月)
●食品の異物混入等が多数報道される。
●国会請願署名開始  ※12月までに1373万筆集約
2001 ●国会請願:審査未了(紹介議員:541名)
●国内ではじめてのBSE感染牛確認(9月)
●BSE問題に関する調査検討委員会 第1回目会合(11/19)
●国会請願:採択(12/7、紹介議員:542名)
●「食品衛生法改正、運用強化を求める国会請願スタート集会」  (10/10:東京)
2002 ●雪印食品をはじめ食肉偽装問題が発覚。(2月〜)
●「BSE問題に関する調査検討委員会報告」発表(4/2)
●食品への無認可の食品添加物使用問題が相次いで発覚(5月〜)
●無登録農薬が違法に輸入・販売・使用されていたことが判明(8月)
●食品安全基本法骨子案公表(12/24)
●「食品の安全を求める緊急消費者集会」(3/28:東京)
●「BSE問題調査検討委員会報告書」を経ての『日本生協連の見解』発表(5月)
●谷垣食品安全委員会担当大臣への要請実施(10/15)
●日生協理事会「食品安全運動推進小委員会」設置(10月)
2003 ●食品安全基本法案、食品衛生法改正案を含む、食品安全関連8法案閣議決定(2/7)
●食品安全基本法案衆院本会議可決(4/22)
●食品衛生法改正法案衆院本会議可決(5/8)
●食品安全基本法案参院本会議可決(5/16)
●食品衛生法改正法案参院本会議可決(5/23)
●食品安全基本法公布(5/23)
●食品衛生法改正法公布(5/30)
●日生協『食品安全基本法案・食品衛生法改正法案等への基本見解』を発表(3月)
●「消費者の求める食品安全基本法・食衛法改正実現消費者集会」  (3/13:東京)
●参議院内閣委員会の参考人意見陳述・質疑に日本生協連・品川専務理事が招聘される(5/8)
●日生協『食品安全基本法・食品衛生法改正の成立にあたって』を発表  (5/23)


食品安全基本法・食品衛生法改正の成立にあたっての御礼

 (略)私たち生協は、食品衛生法の抜本改正をはじめ、今日的な食品の安全問題に対応できる社会システムの確立をもとめて、足かけ5年にわたる運動を全国で展開してきました。

 2000年6月、京都府生協連第47回総会では「京都の生協の力をあわせ、食品衛生法の抜本的改正を求める署名にとりくみましょう」の特別決議を採択して取り組みをつよめ、集約された署名数は京都の生協運動史上、最高の46万5620筆となりました。この署名活動は、JA、森林組合、漁協、生協の協力・共同で取り組まれたことが特筆され、また京都労働者福祉協議会、京都消費者団体連絡協議会、共同作業所などにも協力をいただくことができました。

 さらに、京都府知事をはじめ行政との懇談、地元選出国会議員への要請、京都市等各自治体議会での意見書採択など、かつてない規模と広がりをもって運動がすすめられ、「食品の安全の社会的なシステムづくり」へ大きな役割をはたしてきました。

 今回の法制定・改正においては、・・・略・・・生協の主張の多くが採り入れられています。今回の法の制定・改正は、わが国の食品安全の法制度が転換される大きな一歩となるものと期待しています。

 そして、今国会の審議にあたっては、わたしたちが提起してきた論点を中心に多角的な議論が熱心におこなわれ、大多数の賛成あるいは全会一致で可決されたこと、また審議をつうじて、法案にくわえて、生協の主張を反映した付帯決議がおこなわれたことはたいへん貴重であると考えています。今回の法制定・改正は、文字どおり党派をこえた全国民的な願いにもとづいたものと評価できるでしょう。

 また国会審議の過程でも、委員会・本会議での審議にあたっては、京都選出の国会議員のみなさまから、たびたび京都の生協としての要望とコメントをもとめられました。地域住民の組織である生協の声が国会の委員会・本会議に直接反映されていくなかで成立をみた、というプロセスもまた画期的であったといえます。

 今国会での上記法案の成立にさいし、ご支援いただいた各党国会議員のみなさま、ご協力いただいた友誼団体のみなさま、京都府知事をはじめ行政・各自治体議会のみなさまにたいし、あらためて心より御礼を申し上げます。 (以下、略)



〔 ひとつまえにもどる 〕


京都府生活協同組合連合会連合会