「京都の生協」No.60 2006年8月発行 この号の目次・表紙

(5) 京都府立医科大学・府立大学生協の中川正法理事長を訪ねて
病院内にも売店とレストランがある
ユニークな大学生協です

  今号では、京都府立医科大学・府立大学生協の中川正法理事長を訪ねました。中川先生は、京都府立医科大学院教授で、週3回神経内科の外来診察もされています。府立医大に赴任されたのは2002年10月。中川先生に、生協とのかかわりや理事長になられたきっかけ、大学生協の役割等についてお話をうかがいました。吹田知久専務にも同席していただきました。


吹田専務

小林会長理事

中川理事長

生協とのかかわり――医学書値下げ運動のころ…

小林: 生協とのかかわりは学生時代からとお聞きしましたが…。
中川:

そうです。生まれは北九州市門司で、大学は鹿児島大学医学部です。学生時代に学生委員、生協の総代をやりました。1974〜75年ごろ、医学書が値上がりしたので、医学生の代表として同級生3人と東京の出版社に団体交渉に行くことになりました。当時は医学書といえば、1冊1万5000円から2万円もする高価なもので、そのころはいまと違って学ぶものは本しかなく、本は貴重品でした。

小林: 当時は京都生協でも物価値上げ反対の運動をしていました。
中川:

医学書を扱っている出版社は、東大赤門の近辺に20社ぐらい軒を並べていました。「本を大学生協に入れてほしい」「割引してほしい」「廉価版を作ってほしい」と交渉しました。はじめての東京で、羽田空港で記念写真をとったのもなつかしい思い出です。(笑)

吹田: そのころの運動のおかげで、いまでは大学生協での医学書の取扱いと割引は当たり前になっています。

なぜ理事長に?

小林: 理事長になられたきっかけは?
中川: 前の理事長の安原正博先生は、鹿児島大学医学部の先輩なんです。昨年、図書館長になられて生協の理事長との兼任はむずかしいので、わたしに副理事長になるように声をかけられたのです。そして、ことし、理事長に選出されました。これまでは代々、府大と医大で交互に理事長を出しておられ、医大の場合、いわゆる基礎系の教授が理事長をされておられます。「臨床教授」はわたしがはじめてです。ますます、いそがしくなりました。

なぜ2つの大学にひとつの生協?

小林: 府立大学と医科大学というまったく性格の違う2つの大学にひとつの生協というのはなぜですか?
吹田:

どちらも京都府立の大学で、ここで働く教職員はともに府職員。そんなことから1962年11月に合同総会を開いてひとつになりました。いろいろな価値観をぶつけあうことを大事にしていっしょにやりましょうと。

中川: いろいろな人がいておもしろいですよ。
吹田:

医科大学には病院があります。病院内に売店やレストランをもつユニークな大学生協なんです。組合員は5月末で1万1000人弱。そのうち学生は約3割です。府大生約2000人、看護科生約330人、医学生600人、教員約2100人、職員約2000人、その他(入院・外来患者など)約3000人です。

小林: たしかにかなり特色のある大学生協ですね。
中川: 病院内の売店やレストランの経営はたいへんです。レストランの「日曜日営業」をしてほしいなど、運営・サービスにたいする要望もつよいです。売店については、日曜日営業と平日の営業時間を延長するなど、改善をはかっています。ただレストランの日曜営業はむずかしく、営業がムリなら、せめてすわれる場所の提供ができないかと考えています。また、安全・安心な食事など、生協のよさをもっとアピールすべきではないかとも思います。

組合員の声にもとづく店舗運営

小林: 生協のお店には、むずかしい医学書がならんでいるかと思えば、小学生が食べるようなかわいいお菓子もある、このギャップは?
吹田: いままで生協の店にあるのは、書籍と文具とパソコンの見本だけでした。年ねん利用が減りつづけ、どうしたらもっと利用されるお店になるのか、去年の総代会で話し合ってもらいました。そしたら食べものをおいてはということになり、5月にアンケートをとり、9月からその声にもとづき品ぞろえしてきました。結果、来店数は1・5倍にふえました。利用単価は落ちていますが…。
中川:

医学部の学生は本を買わなくなっています。受験勉強的な、国家試験対策のような本が売れて、本格的な医学書はあまり売れていない。

小林: 店内で大学のロゴ入りボールペンを見つけましたが、ほかにもありますか?
中川:

はい、現在はボールペンのほかに、シャープペン、ネクタイ、和菓子の三笠(「どら焼き」、バラ売りとお土産用箱入がある)などがあります。教授会の休憩時間に三笠を配って、生協をアピールしました。生協があることを意識してもらうことがいちばん大事なことだと思っています。

吹田: 教授会で配られたあと、三笠を買いに来られた方が数人いたそうです。
中川:

いまオリジナル商品の開発準備をすすめているのは、絵はがきとクリアファイル。医大の美術部の学生に頼んで下絵ができました。学生数が少ないので、オリジナルグッズを開発するのはじつはたいへんなんですが…。


こんごの大学生協の役割――医療生協との交流も…

小林: 2つの大学にはいまどんな課題が?
中川: 府立大は、2年後独立行政法人になることになりました。コンビニの導入の可能性もあるわけで、ますます生協の存在価値が問われてくると思います。また、医大は、5年後、外来診療棟をたてかえる予定です。それにともない、生協のいまの地下食堂と1階の書籍の店舗は、予定どおりいけば、1階食堂、2、3階書籍部と事務所になります。この春、看護学科の地下売店のオープン祝賀会では学長にあいさつしていただきましたが、大学のなかで、生協がどういう仕事をしていくのか、大学との連携のあり方なども問われてくると思います。
小林: 生協へのクレームにはどんなものがありますか?
中川:

医大でいちばん多いのは、医師が白衣を着たまま食べていることへのクレームです。職員用の食堂がないために寄せられたものです。

吹田: 府大の学生に多いのですが、「白石さん現象」というのか、「○○をおいてください」という声にたいして背景を考えて回答しないと納得してもらえない。生協で働く職員(正規もパートも)には、いわゆるマニュアルだけでなく、生の声で接する場所が生協だ、ということをよく理解してほしいと話しています。
小林:

医療制度改革で医療機関の経営がたいへんだと聞きますが、医大ではいかがですか?

中川:  たいへんです。今回の医療制度改革は高齢者の負担増になり、これによって受診抑制がおき、外来患者も入院患者も減り、さらにはお見舞いが減り、結果、生協の利用が減り、生協の経営にとってもますますきびしい事態が想定されます。医療行政への対応が必要です。また、大学の中で病院の役割をどう考えるかも大事です。
小林: ほんとうにそうですね。
中川: そういうなかで、学生の入院体験ツアーや在宅訪問ツアー、異業種交流などに生協がかかわっていけるといいなと考えています。
小林: わたしどもの会員生協には3つの医療生協があります。医療生協と大学生協との交流などもできるといいですね。


大学のロゴ入り三笠


病院の売店


京都府立医科大学・府立大学生活協同組合

代 表 者/理事長:中川 正法 専務理事:吹田 知久
所 在 地/京都市上京区河原町広小路梶井町465  TEL/075-251-5952
事業高/108,602(万円)
組合員数/10,926人
設立年月日/1959年12月26

ホームページ
http://ha1.seikyou.ne.jp/home/kpum-kpu/

京都府立医科大学、同附属病院、京都府立大学で生協活動をすすめている。各大学とも大学改革が進行中であり、生協の事業の基盤も大きく変わりつつある。病院のなかでの生協活動は全国的にみてもユニークな存在である。

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