「京都の生協」No.67 2009年1月発行 | ![]() |
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京都大学生協 松本英治理事長をたずねて 大学生協は、授業では学べない、社会に出る前の実地教育の場です! |
![]() 京都大学生協は、京都大学の学部生・院生、教職員の福利厚生の充実に大きな役割をはたしてきました。吉田キャンパス・本部構内にある京大生協本部を訪問し、松本英治理事長と中森一朗専務理事から、国立大学法人化の影響やオリジナル商品の開発、環境の取り組みなどについてお話をうかがいました。 |
※お話をうかがった百周年時計台記念館1Fサロンは開放的でゆったりしたくつろぎの空間でした。 | ||
![]() 松本英治理事長 |
![]() 中森一朗専務理事 |
![]() 小林智子会長理事 |
理事長になられて4年 |
小林: | 生協の理事長にご就任されて何年になられますか? |
松本: | 2005年春に理事長になりましたから、ちょうど4年目です。その前の1年間、副理事長をしましたので、生協とかかわって5年になります。 |
小林: | 先生はどのような研究をされているのですか? |
松本: | エネルギー科学研究科というところで、材料の研究をしています。最近は、超音波や磁場を用いて材料の欠陥や劣化を検出して、発電所などの施設や車両、航空機などの安全性を確保するための研究に重点を置いています。 |
小林: | 研究とはまったく異なる生協という組織の理事長になられて、何か発見されたことはありますか? |
松本: | 大学の生協は長年利用してきましたが、それがどのように運営されているかはほとんど知りませんでした。とくに、学生さんがいろいろな企画や事業に積極的にかかわって活動していることがわかりました。 |
独立法人化と生協 |
小林: | この間、国立大学の独立行政法人化がすすめられました。生協にとってもその影響をうけてたいへんな時期だったのではないでしょうか? |
松本: | そんなにたいへんとは思いませんでした。ただ大学に市場原理・競争原理が持ち込まれたことで、生協も大学に関係するひとつのパートナーとなり、入札やコンペなど民間業者と競争になることが目立ってきました。経営という視点で見れば、民間業者とくらべて生協はまだ恵まれている面もあると思います。大学生協は大学と福利厚生事業をすすめるという業務委託契約をむすんでいます。学生や教職員が利用しやすいように生協の店舗や食堂は便利な場所に設置されています。 |
小林: | 生協が恵まれた状況にあることはありがたいことですが、半面、大きな投資をせざるをえないといったこともあったのでは。 |
松本: | はい、2005年にオープンした桂キャンパス福利厚生棟には、かなりの額の投資をすることになり、経営面での負担はあります。 |
「レジ袋をなくす」プロセス |
小林: | 学生さんがたいへん積極的に活動されているそうですが、どのような活動ですか? |
中森: | キャンパス運営委員会といって、それぞれのキャンパスごとに設置されています。生協職員と学生委員が話し合う場です。ここでは学生が主体になってやるからおもしろいし、学生には生協活動の醍醐味を感じてもらっていると思います。たとえば、レジ袋にかんする取り組みですが、有料化ではなく削減をめざすことにしたのも学生の発想でした。強制ではなく、自分ができることをもとに考えるということです。いまレジ袋の利用率は5%で推移しています。評価したいですね。 |
松本: | 理事会の議論をつうじて、レジ袋をなくす方向が出たのはいいと思いました。しかし、現場はどうなのか? 組合員の行動は? という点での議論が不足したのではないかと考えています。現場からは「理事会で決まったことだから」という受けとめですませてしまって、たとえば「反対である」とか、別の声が出てこなかったことが気にかかっています。 |
中森: | じつは今年、新入生にエコバッグを配りました。でもあまり使われていません。もともと買い上げ点数も少なく、学生にマイバッグは無理なのかなと思ったりします。 |
松本: | 大学の授業や研究から学ぶこととは違って、環境委員会の活動など生協で学ぶことは、学生が社会に出る前の実地教育の場になっています。 |
総長カレーが話題です |
小林: | 京大生協のオリジナル商品の開発は、マスコミにも取り上げられ、注目を浴びていますね。ビールのホワイトナイル(※注)とか、総長カレーとか…。全部で何種類ありますか? 年間の売り上げはどのくらいですか? |
中森: | 種類としては200近く。年間の売り上げは6000万円ぐらいです。 |
小林: | 西陣織の名刺入れもありますね。 |
松本: | 「こんなものを作りませんか」というノウハウをもらってつくったものも多いです。京大のシンボルマークの「くすのき」マークをつければ何でも売れる時代がありました(笑)。今は、京大の知的資源を商品を通じて社会に知らしめる側面がつよく、早稲田と共同開発したホワイトナイル、総長カレー、シーボルトが描いた植物・昆虫の絵のポストカード、教員のアイデアの元素記号表示のマグカップなどが話題をよんでいます。 |
小林: | 大学ならではのアイデアがいいですね。 |
松本: | 総長カレーをつくる発端は学生の声でした。「尾池総長(当時)はおもしろそうな人だ。なのに学生は入学式などでしか会わない。もっと総長を身近に感じたい。総長が好きなメニューを考えてもらおう」ということで、総長が大好きなカレーのメニューをつくってもらいました。KBS京都とのコラボでレトルトカレーも開発されました。 |
中森: | これらのオリジナル商品は、大学に見学に来られる方にも人気があります。 |
![]() 京大生協 オリジナル商品・ 総長カレー |
これからの抱負は? |
小林: | これからの抱負をお願いします。 | |
松本: | 大学はどんどん変わりつつあります。大学当局がすすめる研究が発展するために、生協が大学といっしょになってやれることはたくさんあると思います。われわれのように生協の職員でない、大学で働く者が生協の仕事について注意ぶかく見ていくというのも大事な役割だと思っています。組合員である学生の活動を活発にすることも大切です。 | |
中森: | 経営の問題では、健全経営の実現、福利厚生施設の整備のための資金づくりなどを急ピッチですすめることが至上課題です。政治・経済状況が混沌として見通しがつきにくい今日、自分たちがめざすところをはっきりさせながら、職員の元気がでるような次世代ビジョンをつくることが求められています。 | |
松本: | 大学には毎年学生が何千人と入ってきます。生協として4年間の学生生活をサポートしていくことが大事です。「洗剤を入れてお米をとぐ」という学生もいますから、しっかりサポートしていきたいと思います。 | |
小林: | 学生にとって大学での4年間は、学問だけでなく多くのものを学ぶときなのですね。今後も京大生協の多様な活動に期待しています。本日はありがとうございました。 | |
![]() 100周年時計台記念館1Fショップ。 京大生協 オリジナル商品が並んでいます |
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※注:ホワイトナイルは、06年4月に「古代エジプトでつくられていたビール」をコンセプトに早稲田大学のエジプト考古学と京都大学の植物遺伝学が出合って共同開発された。 07年8月には古代小麦のエンマー小麦を原料にリニューアルされ、発泡酒のブルーナイルも開発された。 共同開発第3弾としてハイアルコールビール(アルコール分7%)のルビーナイルが08年9月に発売された。 |
京都大学生活協同組合 設立以来59年、京都大学の学生、院生、教職員の生活向上と勉学研究支援のための活動を続けてきた。 近年大学が大きく変化する中、2002年、「京大生協のMission:三つの使命」と「Vision2010」を策定し、新しい大学生協像の実現を目標にとりくみを推進している |
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