「京都の生協」No.70 2010年1月発行 | ![]() |
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京都工芸繊維大学生協 浦川 宏理事長を訪ねて 特色ある大学の教育・研究・キャンパスライフに役立つ生協をめざして |
京都工芸繊維大学は、五山の送り火のひとつ「妙法」の山裾にひろがる松ヶ崎にあります。京都高等工芸学校および京都蚕業講習所に端を発した歴史があり、2009年に創立60周年をむかえました。京都工芸繊維大学生協を訪問し、浦川宏理事長と児玉恵美専務理事にお話をうかがいました。
![]() 浦川宏 理事長 |
![]() 小林智子 会長理事 |
09年度から理事長に就任 |
小林 今年度から理事長にご就任とうかがっていますが、生協とのかかわりは、どのようなものだったのですか?
浦川 わたしは、京都工芸繊維大学出身でして、学生のときからずっと生協の組合員なので、生協とのかかわりは長いのです。
元生協 理事長の遠藤久満先生から お話があり、08年度に理事になりました。理事長になってよかったと思うのは、学生理事と同レベルで議論できることと、あいさつしてくれる学生がふえたことです(笑)。
京都工芸繊維大学は、工芸科学部1学部で構成される工科大学であるというのが特色で、バイオ・材料・情報・環境などの先端科学技術分野から造形・デザインまでの幅広い分野で、地域とともにモノづくりをすすめています。
モノづくりの精神、大学オリジナルグッズ |
小林 以前に京都府中小企業団体中央会の渡邉隆夫会長とお話したさいに、京都は創意工夫をこらして新しいモノづくりをしたり、新しいお商売を考える気風がつよく、そうしたことがもっとも敬意の対象となる土地柄だとうかがったことがあります。
浦川 大学が京都にあるということは、とても重要です。たとえば、日本の文化を担ってきた伝統工芸の工房が、京都には身近なところにあります。
大学の授業でも、グループごとに組みひもや京扇などの工房を訪問し、匠の話を聞き、その技と作品に直接ふれてくる、その聞き取り調査の結果をまとめて研究発表をする、さらに自分たちでオリジナルの制作をするといったことがされています。
小林 生協の食堂で使われているお箸も大学のオリジナルだそうですね。
浦川 ペットボトルのリサイクルにチャレンジして、回収・材質の粉砕・再加工をおこない、お箸を作って、生協で使ってもらいました。今はトレイを製品化できないか、検討しています。
大学の特色をベースにした生協活動 |
小林 生協の食堂事業はどんな状況でしょうか。
浦川 院生や研究生が多いという大学の特徴もあり、夜の食堂利用も多いし、徹夜で研究していた学生が朝食の利用もします。営業時間は8時15分から20時30分で、土曜日営業も定着しています。12時~13時までは学生、それ以降には院生の利用と、昼のピークもずれて、混雑も緩和されています。
児玉 多くの学生が、ごはん・みそ汁・主菜・小鉢というように、献立を考えて選んで食べています。
京都という土地柄もあり、「湯葉・豆・オクラ」といった小鉢はメニューとして欠かせません。野菜をとることを意識している学生も多いです。
![]() 児玉恵美 専務理事 |
浦川 伝統工芸にかかわる研究をする学生も多いので、「おばんざい」という京都の食文化が根づいているのかもしれませんね。でも、利用単価はだんだん下がってきて、いま360円~400円となっています。
組合員の「声」を聴く活動、生協に行けば「必要なものがある」 |
小林 経営もずいぶん改善されてきましたね。
児玉 03年度時点で累積赤字が4800万円ありましたが、08年度は310万円まで減りました。
浦川 食堂の味もよくなりました。ケータリング需要(学生の集まり・学会など)が伸びたことも影響していると思います。
児玉 「組合員の声を聴く」ことに力を入れています。購買部に置いている「声ノート」には、組合員に研究課題の情報や商品要望を自由に書いてもらい、担当職員がそれを見て商品を仕入れる。そして、組合員に使ってみての感想を書いてもらうという取り組みをつづけています。
また、レジでは「これは何(の課題)に使いますか?」という組合員からの聴きとりもしています。ブックセンターには「工繊大の先生お勧めの本」コーナーを設置しています。専門性の高い建築関係の雑誌は種類も多く、一般書店にはないものをあつかっています。
浦川 書籍については、注文した本が、研究室のメールボックスに配達されるので便利です。学生委員や理事も、何のために生協はあるのかと うことにシビアです。教材もふくめて「学内で必要なものは生協に行けばある」ことをめざしています。
たくさんの学生委員組織 |
児玉 学生委員の活動組織として、昼間生協学生委員会・夜間主生協学生委員会・上級生委員会があり、昼間生協学生委員会はさらに4つの委局にわかれて活動しています。
学生委員と学生理事をふくめ60名ちかい学生が、なんらかのかたちで生協にかかわっています。
浦川 パソコンサポートも、いまはソフトで対応してしまうなど、身近になりすぎて、逆にわからないことも多くて、需要は高いです。
「KIT EVE」(新入生が充実した大学生活を送るために必要な友だちを、入学前に作ってもらうなどの目的の企画)など、学内レクリエーションもおこなっています。私の学生時代にはなかった、友だちづくりまで生協が手伝ってくれるんですね(笑)。
人・地域・社会がつながる |
小林 総代会議案書の方針文書もすばらしいですね。「私たち一人ひとりが輝ける生協を目指そう!」「二人三脚 三人四脚 明日も行きたい生協店舗へ」など、活発な学生がいて心づよいですね。
浦川 たしかに、積極的な学生が多いのですが、いまは、学生全体の底上げをすることが大切だと考えています。そのための情報発信を生協からできればと思っています。
人と人がつながることは楽しいし、うれしい。人と地域がつながる、人と社会がつながる、つながるということの大切さを伝える役割を生協ではたすことができたらと思っています。
小林 工繊大が京都の地にあり、その特色にもとづいて生協の事業活動を組み立てていること、そのため教育・研究・キャンパスライフの主体である組合員の声を聴き、実現する取り組みを持続していることなど、たくさんのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。
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