「京都の生協」No.73 2011年1月発行 今号の目次

大学生協京都事業連合 名和又介理事長を訪ねて
困ったときの連帯だけでなく、ふだんのときからの連帯を!

 大学生協京都事業連合は、京都・滋賀・奈良にある19の大学生協から構成されている連合会です。会員生協の店舗で供給する商品の共同仕入れ、共通する業務システムの開発・運用などの業務をおこなっています。名和又介理事長と沼澤明夫専務理事にお話をうかがいました


京都府生協連
小林智子会長理事

大学生協京都事業連合
名和又介理事長

小林 先生ご自身のことから、おうかがいしたいと思いますが、ご専攻の分野は…

名和 同志社大学で教えているのはおもに中国語ですが、それ以外に中国文学、中国の文化と歴史なども教えています。私が大阪外国語大学に入学して中国語を勉強していた頃に、中国で文化大革命が起こりました。それまでは「中国語なんか勉強したって、メシは食えない」といわれていましたが、急に中国語のできる人が必要な時代になり、「先見の明がある」ということになって……(笑)。


  生協はおもしろいところ

小林 生協とのかかわりはどのようなものだったのでしょうか?

名和 恩師の太田進先生がながく同志社生協の理事長をつとめられていて、「こんど退任するから、お前が理事になれ」といわれて、一も二もなく理事になりました(笑)。

小林 理事になられて、大学生協の印象はどのようなものでしたか?

名和 おもしろいところだなぁと思いました。生協では学生・教職員がいっしょになって、こんなこともできる、あんなこともやれる、こういう組織で楽しみながら世の中のお役に立つことができるなんて、たいへんすばらしいことだと思いました。


  楽しい理事長の仕事

小林 京都事業連合の理事長の役割については、どのように考えておられますか?

名和 私の場合は専攻との関係がない、過去の運動経験もない、いわば「異端児」です(笑)。
 しかし、シロウトはシロウトの発想で、いろいろと横断的な提案ができるのではないかと思っています。自分としても宣伝や旗振りの役目が合っていて、気に入っています。

小林 理事長職を楽しんでなさっておられますね。

名和 自分のやっていることが、学生たちの役に立てる、学びと成長のサポートができる。こんないい仕事はありません。


  学生の食のあり方に危機感

小林 大学生協では、食の問題について、産地訪問・メニューづくり・100円朝食の取り組みなど、いろいろな活動がすすんでいますね。

名和 全国の大学生協で「学生生活実態調査」を毎年実施していますが、そのなかにあらわれている学生の食のあり方に危機感を感じています。大学自体も、健康的な学生生活を送るために食というものがどれだけ大切か、共通の認識をもつようになってきました。私自身も生協活動にたずさわるなかで、食の重要性を真剣に考えるようになってきました。4年前から、「食の健康」をテーマに大学生協寄付講座を開設しました。

小林 先日の府連理事会で、京都事業連合のみなさんなどがつくられた小冊子『すいすい自炊』が配られました。

名和 学生が自分自身の健康のためにということだけでなく、「まわりの友人たちのためにも、食を大切にする活動をやっていこう」という取り組みになってきています。

小林 地域生協でも、地産地消、飼料米の活用など、地域の農業・生産者と積極的にかかわっていく取り組みがすすんでいます。

名和 ぜひ大学生協へのご協力もお願いしたいですね。少子高齢社会のなかで生協がはたす役割は大きなものがあります。国や自治体でも、生協と連帯・提携したらどんな取り組みができるか、問題意識を交流できたらと思います。


  協同組合どうしの連帯を

名和 大学生協と地域生協などとのあいだでも、困ったときだけの連帯でなく、ふだんのときからの連帯をすすめたいものです。

小林 平和の課題では、ピースナウ舞鶴の取り組みがありますね。京都生協の地元の役職員・組合員が学生のみなさんといっしょに学び、交流することで、あたらしいパワーを生み出しています。

名和 ピースナウ舞鶴で満州からの引き揚げ体験について聞いた学生が泣き出してしまったことがありました。そのとき、生協のお母さんが「泣いてどうするの」といってくれたのはすばらしいことで、とてもよい平和学習・教育機会となったと思います。70歳、80歳の方が熱心に平和の語り部活動をすすめていることに、学生たちは感動し、この感動をまわりにひろげていこうと熱い心をもって活動をすすめています。


  きびしい学生生活

小林 いま、学生生活は経済的にもたいへんきびしいものがあります。先に紹介された「学生実態調査」でも、一食あたりの昼食の平均単価が400円以下になっているという報告をうかがいました。

沼澤 学生の収入構造がたいへんいびつになっています。かなりの部分の学生が奨学金に頼らなければ生活が成り立たないという状況です。奨学金も卒業したらすぐに返さなければならないものが多い。


大学生協京都事業連合
沼澤明夫専務理事

名和 親からの仕送りのない学生は1割におよぶ状況になってきています。アルバイトに追われて、授業どころではない。就職活動もたいへんです。生協でも、学生生活の土台・構造を変えるための提案やアピールが必要です。


  事業連合の役割

小林 そのような学生生活を反映して、各大学生協とも経営がきびしい状況ですが。

名和 私は同志社生協の理事長をながくつとめましたが、赤字がつづいて最悪の状況となり、累積債務をどのように克服・解消していくか、大きな課題でした。
 京都事業連合だけでなく、全国の大学生協の役職員が支援に動いていただくなかで、職員さんたちの意識・行動が大きく変わっていきました。事業連合などからのサポートによって、同志社生協の役職員が「みんなで協力し合って負債を返していこう、がんばろう」という気持ちをもてるようになりました。

沼澤 京滋・奈良の大学生協全体が、経営の立て直しということを最優先に取り組まなければならない状況です。
 事業連合としての役割はなんといっても、会員の赤字からの脱却、経営改善にどのような支援をおこなえるかです。
 健全で安定した経営という土台のうえに、学生・教職員の生活向上や福利厚生の充実、その他学園生活を豊かにする活動への貢献があるわけです。
 一方、役職員が「とにかく経営さえよければいいんだ」という考え方におちいらないよう、生協の理念・使命をしっかり身につけて仕事をしていけるようにしていくということも、私たちの大切な役割だと考えています。


  よい循環が生まれはじめた

小林 各大学生協の経営改善についての進捗は、どのような状況ですか。

沼澤 会員生協の経営改善と並行して事業連合自身の改革に取り組んできました。この間、食堂事業をはじめ、事業連合の本来的な役割を見直すなかで、よい循環が生まれだし、いい方向に動いてきました。結果が出ることで、職員も元気になっています。

名和 生協の職員さんたちは優秀ですね。自分から主体的に動くようになりました。仕事のなかのちょっとした気づきによって、生協全体が大きく変わっていきます。

小林 きょうは、いろいろなお話をうかがえて、ありがとうございました。


大学生活協同組合京都事業連合
代表者 理事長:名和又介
専務理事:沼澤明夫
所在地 京都市左京区高野玉岡町23-3
TEL.075-711-1115
事業高 169億5,965万円
会員生協数 19
設立年月日 1971年4月30日
ホームページ http://www.kyoto-bauc.or.jp/

 1961年、食材共同仕入れのために設立された「京都ブロック」を前身として、1971年、「事業連合」として法人化。商品の共同仕入れをはじめとした大学生協の事業を支える各種の共同事業をすすめている。