「京都の生協」No.76 2012年1月発行 今号の目次

やましろ健康医療生活協同組合 河本一成理事長を訪ねて
確かで誰もが納得する医療・保健を実現するために

 やましろ健康医療生協本部のあるあさくら診療所は、宇治市の閑静な住宅街のなかにあります。めぐまれた環境のなかにあって、施設もゆったりとしています。
 内科・リハビリテーション科・放射線科・神経内科のほか、歯科・ケアステーション・ヘルパーステーションなどをそなえています。河本一成理事長をお訪ねしました。



京都府生協連
小林智子会長理事

やましろ健康医療生協
河本一成理事長

小林 まず設立当時のことから、おうかがいしたいのですが。

河本 「みんなの医療生協をつくろう」と、1992年から設立準備活動をはじめ、集会所や個人のご自宅などで、100カ所以上の「医療懇談会」を開いてきました。設立されたのは、1994年です。
 医者が地域に出むいて健康相談をしながら、どんな医療をめざすのかについて、住民と対話をしながら、診療所をつくっていったというのは、府南部ではこれまでなかったことだったと思います。
 ユニチカ宇治工場での慢性二硫化炭素中毒問題も大きなきっかけとなりました。労働組合や地域団体・法律事務所などがいっしょに医療生協づくりにくわわったということも、設立にかかわる特徴のひとつです。

小林 「自分たちの診療所をつくりたい」という熱い願いがあったんですね。
 いま、組合員のくらしはほんとうにきびしくなっていますが、医療の現場はどのような状況でしょうか。


  国民皆保険制度のくずれにたいしての活動

河本 経済的な困難をかかえる人が多くなり、保険料や自己負担率の高さから、薬がなくなっても通院されない、薬を間引いて飲まれるといった事態がすすんでいます。
 検査にどれだけお金がかかるかわからないといった不安から検査を控え、その結果、重症化してしまう患者さんがふえています。
 医療生協として、どれだけ患者さんにていねいに相談にのり、情報提供していけるか、もっと勉強していかなければならないと思っています。

小林 やましろ健康医療生協さんは、医療制度そのものを変えていくために、署名活動や駅頭での宣伝活動に熱心に取り組んでおられます。

河本 病気というのは患者さんご本人の生活と労働にかかわっているものであり、社会環境と切り離すことのできないものです。
 病気を治すことと、社会を変えていくことは一体のものだと考えています。


  内科と歯科、そして介護事業との連携で

組合員活動が旺盛に

小林 歯科が併設されているのも特色になっていますね。

河本 内科・神経内科を中心としてスタートしましたが、2001年から歯科が併設されました。歯科があることは、内科としても心づよいんです。
 たとえば、歯の治療をしているなかで糖尿病が発見されることもあるし、逆に糖尿病の治療をしている患者さんに歯科の診療をすすめるといった連携ができるからです。
 そのほか、居宅介護支援をおこなっているケアステーションあさくらが、この本部に近いところにありますし、京都生協さんのお店があったところにヘルパーステーション「さぽーとゆう・ゆう・ゆう」を設置して、介護事業をすすめています。


  訪問診療の取組み

小林 往診活動を積極的に取り組んでおられているとうかがいましたが。

河本 外来の診療が終わったあと、内科だけでなく歯科も患者さんのご自宅を訪問して、診療をおこなっています。
 「診療所に通える人にも、通えない人にも。すべての人に生きる力を」という考えで、チームを組んで在宅医療をすすめています。


  組合員のサークル活動がいろとりどりに

小林 やましろ健康医療生協さんには、たくさんのサークルがあり、組合員活動が旺盛にすすめられています。

河本 「野山を歩こう会」「茶(さ)ろんこあみ」「手づくり教室」「園芸サークル」「絵手紙サークル」「手話教室」など、たくさんのサークルがあります。「歌声喫茶サークル」では、わたしもいっしょにカラオケをしたりしています。
 「○○○したい」という自発的な要求が大事なんですね。家から出なかった方が、外に出るようになると、顔の表情が変わってきます。くらしのなかで健康づくりがされていくということなんです。
 恒例になっている「やましろ健康まつり」には毎年1000人以上が参加して、コンサートをしたり、健康チェックをしたり、にぎやかですよ。

小林 一人ひとりが主体的に健康づくりをしていくことが大事だということが、やましろ「健康」医療生協という名前に反映されているということなんですね。


  医療は生活の一部分であり、地域の一部分

河本 医療本来の使命は、人びとがより健康にくらせるように、より健康な地域づくりがすすむように、というところにあります。
 ですから、医師や職員がどんどん地域に出かけていって、たくさんの「医療懇談会」や学習会・対話の機会をつくっていくということが大切だと考えています。


  原発問題、TPP問題

小林 昨年3月に発生した東日本大震災にさいして、生協が人と人とのつながりをつくっていくうえで重要な役割をはたしました。

河本 やましろ健康医療生協の職員も何度か現地に行きました。いま、原発と原爆をテーマにした学習会をしようと準備をしているところです。放射線被害という点では共通していますから。
 やましろ健康医療生協には、原爆で被爆された方も通院されています。原爆被害は、66年たってもまだ終わっていないのです。

小林 いまは、くらしのなかから、日本のエネルギー政策、そして原発問題を考えていく、よい機会だと思います。
 TPP(環太平洋連携協定)問題は、医療制度にたいしても大きな影響をあたえるといわれています。

河本 みんなで声を上げていく必要があります。日本国内の産業全体をどのようにしていくかを議論していくことが大事であって、「バスに乗り遅れるな」というだけの議論ではダメだと思います。
 株式会社が医療機関を経営できることや、外国人労働者の導入、保険制度を米国型にしていく動きなど、医療を利潤追求の手段としていく考え方が土台にあります。
 そうではなくて、医療は社会的な共通の財産であり、国が責任をもって保持していかなければならない性質のものです。


  会員生協間の交流・連携を

小林 京都府生協連には医療・地域・大学・職域・共済と19の会員生協が加入していますが、もっと交流をふかめることによって、事業や活動の提携をすすめていけたらと思っています。

河本 これまで、京都生協さんと共同で憲法や平和の学習会を開催したり、店舗での健康チェック活動をおこなったりしてきました。

小林 福祉事業や共済活動などでも、いっしょにできることをすすめていけたらと思います。
 これから、どのような医療生協のあり方を展望されておられるか、お聞かせください。

河本 「気軽に受診できる、なんでも相談できる、みんなの診療所をつくろう」という初心を大事にして、地域に頼られる存在になっていきたいと思っています。

小林 きょうはたいへん、ご多忙のなか、ありがとうございました。



やましろ健康医療生協・あさくら診療所
やましろ健康医療生活協同組合
代表者 理事長:河本 一成
専務理事:行松 龍美
所在地 宇治市大久保町山ノ内19-1
TEL.0774-46-5151
事業高 3億0,706万円
組合員数 4,593人
設立年月日 1994年2月23日
ホームページ http://ha2.seikyou.ne.jp/home/yamashiro/