「京都の生協」No.79 2013年1月発行 今号の目次

京都市民共済生活協同組合 増田理事長・山澤専務理事を訪ねて
木造家屋率が高い街で、防火とともに火災共済の助け合い活動を!

 2012年、あらたに設立された生協を会員にむかえることができました。京都市民共済生活協同組合です。京都市内の中小企業者を対象とする京都共済協同組合を母体に、2010年9月、個人を対象とする火災共済の活動をすすめる生協として発足しています。京都市中京区寺町二条にある事務所を訪問し、増田久男理事長、山澤嘉男専務理事にお話をうかがいました。



京都市民共済生活協同組合
増田久男理事長

京都市民共済生活協同組合
山澤嘉男専務理事

横山 生協設立の経過について、まずお聞かせください。

山澤 もともとは市内の中小企業の事業主やそこで働く人びとが加入する共済組合として中小企業等協同組合法(中協法)にもとづく京都共済協同組合が1954(昭和29)年6月に発足していました。組合員は法人や事業者のほか、そこで働く従業員も組合員になって共済を利用していました。一時は10万人ちかい組合員がいましたが、いわゆる保険と共済の一体化という流れのなかで、監督官庁から組合員資格の厳格化がいわれるようになり、これまで認められていた従業員の組合員資格が中協法改正で認められなくなりました。
 従業員の共済事業の受け皿づくりとともに、50数年にわたり京都の特性に応じた火災共済商品を開発してきたノウハウを市民の方にも広く提供していこうということで、2010(平成22)年9月1日に個人を対象とする、あらたな共済生協を設立しました。従来の共済組合の根拠法は中協法であり、管轄は経済産業省でしたが、厚生労働省管轄の生協法にもとづく共済生協というかたちで設立をむかえました。
 京都市民共済生協の加入資格は、京都市内の在住者、または勤務されていて、本市に隣接している地域にお住まいの方です。大津や宇治、亀岡などの方もいます。


  木造家屋率が高い京都市

横山 共済生協設立後も従来の京都共済協同組合は存続しているのですね。

山澤 そうです。中小企業の法人や事業主、同一生計の家族の方がたが対象加入者となり、火災共済と傷害費用共済、交通災害費用共済、自動車費用共済を実施しています。

横山 増田理事長は現職の前はどのようなお仕事を?

増田 消防局に勤務し、在職時も共済組合の推進事業に大きな関心をもっていました。 共済組合設立当時、京都市全体としては非戦災都市でもあり、非常に木造の家屋率が高く、密集し、袋路地も多い、火事が起こったらたいへんという危機意識を多くの市民がもっていました。  都市基盤の脆弱ななか、市民の助け合いで火災防止を図りながら消防力の充実を図るという熱意のもとに、消防行政と連携した、安心・安全な京都を築くため、共済組合がはじまりました。そういう背景で共済組合は市長が理事長になって発足しています。

横山 生協を設立してから感じられたことは?

山澤 生協法は会社法に近く、執行機関と監督機関が非常に厳格に組み立てられ、運用されていると思います。たとえば、理事の選び方や理事と総代の関係などは中協法とは違うところです。

横山 山澤専務は以前はどのようなお仕事を?

山澤 京都市消防局におりました。㈶京都市防災協会で事務局長をしており、定年退職後にこちらの方に来ました。


  市民の防火防災意識も高い

横山 災害対応は京都府生協連にとっても重要な課題と位置づけています。京都市民は防火防災意識が高いというお話がありましたが……。

山澤 百数十万人が住む政令指定都市で年間の火災件数が300件内外、少ない年では200件を切るという都市は他に例がありません。
 市の消防出初式の市長訓示で「京都市は火災の発生件数が全国でいちばん低い。非戦災都市で木造家屋がまだたくさん残っており、市民の防火意識の高さと実践力、消防団の力によるところが大きい」といつもいっておられます。
 そこにわたしたちが共済事業としても寄与することができる部分があるのではないかと思っています。安心な街ではあるけれど、万一何かがあれば共済で助けられる、共済を使うことがなければ剰余金で防火防災事業の推進に役立てる。共済生協は非営利法人なので、剰余金を多く組合員に還元できるというメリットがあります。


  市の防火防災力を高める役割

増田 市民が共済に入って火事を出さずに生まれる剰余金の活用としては、加入者に直接還元することもあるし、市の防火防災力を高めることに使う方法もあります。
 京都共済組合では、設立以来毎年3000万円とか5000万円とかを消防力充実のために京都市に寄付をしてきました。その寄付で購入した消防車が「京都共済組合号」と称して1970(昭和45)年ころまで都大路をたくさん走っていたのは、今ではなつかしい話です。市民共済生協と京都共済組合は、消防行政の推進とともに地域の防火防災力向上にとってなくてはならない不即不離の関係、防火ということでは共通の課題をもっています。


  火災共済の特徴

京都府生協連・横山治生専務理事

横山 京都市民共済生協の火災共済にはどのような特徴がありますか。

山澤 京都市民共済生協では、出火要因が少なくなった住宅にお住まいの方や火災を出さない努力をされている方なら掛金を割引しようということで、タバコ火災防止なら15%、てんぷら鍋、暖房器具火災防止それぞれ10%、最大で35%まで掛金を割り引いて火災共済の加入ができる「あんしんマイハウス火災共済」の開発・販売をおこなっています。
 ほかに類焼費用担保特約パックがあります。万一、火元になった場合、隣近所の方の損害については、火元に重過失がないかぎり損害賠償の責任はありません。
 火元も生活の立ち直りに負担が大きく、過重な負担を軽減しようという趣旨なのですが、かといって住みつづけていくうえで、道義的にもなんらの補償をしないではすまない場合があります。共済組合では、他の共済組合に先立ち、火元の賠償責任の有無とは関係なく一定範囲の補償をする火災原因別に、類焼特約を設定しています。
 また住宅購入時の担保として火災保険に入っておられる方が多いのですが、ローン返済の担保が目的なので建物を対象として補償がかかっている例が多くあります。建物以外の家財にも十分な補償を付けていただけるように家財に特化したパック商品もあります。万一の補償を十分に担保するため、ニッチ(補償のはざま)の部分を低額で加入いただけるようにしています。

横山 こんごの抱負などをお聞かせください。

山澤 とにかく新しい京都市民共済生協を知っていただき、組合加入、契約者を増やすことが課題です。京都共済組合の場合は、事業者どうしの集まりがあり、そこでお話をすれば話が伝わりましたが、共済生協の場合はどこにどう訴えれば伝わるのかわからない。そのため市バスや地下鉄、市民しんぶんなどを利用して知名度向上の広告宣伝をおこなっているところです。
 また、こんご組合の防火防災事業の一環として、京都市は大学の街なので大学の防災機関などともタイアップして講演会なども計画していきたいと思います。

横山 京都府生協連への期待や要望などがあれば……。

山澤 設立企図からこれまで、京都府にたいして、直接細かな問い合わせや照会をしてきたのですが、京都府生協連を通じて生協法の考え方、指導指針、運用について、厚労省や京都府、他の生協のノウハウや情報を得ることができればと思います。
 京都市内という限られたエリアで小回りをきかしながら、市民の役に立っていこうと考えています。他の共済組合とはまた違った土俵で住み分けしながらがんばっていきたいと思っています。

横山 非常にご苦労が多いなかで組織の基盤固めにがんばっていらっしゃることがよくわかりました。本日はどうもありがとうございました。


京都市民共済生活協同組合
代表者 理事長:増田 久男
専務理事:山澤 嘉男
所在地 京都市中京区寺町通二条下る 
妙満寺前町450番
TEL.075-744-0681
事業高 1億8,400万円
組合員数 1万4,106人
設立年月日 2010年9月1日
ホームページ http://shimin-kyoto.com/