「京都の生協」No.83 2014年4月発行 今号の目次

池坊学園生協 小林加代子理事長を訪ねて
和を尊び、おもてなしの精神で美をあらわす学園での生協活動

 池坊学園は池坊華道の根本理念「和と美」を建学の精神として創立され、短期大学と文化学院で構成されています。歴史と文化と伝統祭事が豊かにくりひろげられる京都の鉾町にあって、地域と連携したさまざまなイベントにも積極的に参加するなど、京都らしい学園運営がおこなわれています。
 今回は、京都市内の中心部にあるキャンパスで活動している池坊学園生協を訪ね、小林加代子理事長にお話をうかがいました。



池坊学園生協
小林加代子 理事長

横山 生協の理事長になられた経過を教えてください。

小林 大学院までは同志社大学の生協組合員でした。2008年に池坊短大の教員に就任してから、すぐに生協の理事になりました。2010年にそれまで理事長をされていた先生が退任されることになり、わたしが理事長職を引き継ぐことになりました。

横山 先生の研究のご専門は……。

小林 専攻は国文学で、とくに平家物語を専門に研究してきました。本学ではそれを 直接あつかう科目はありませんので、「花と文学」というテーマの授業ですとか、「京都探訪」というテーマの授業のなかで、京都やいけばなに関連する文学を紹介していくということで、わたしの研究分野を取り入れる講義をしています。


  「3足のわらじ」をはいて奮闘中

横山 おもしろそうな授業ですね。先生は大学の地域連携推進室室長という肩書ももっておられますが……。

小林 昨年7月に就任しました。池坊学園は地域との連携を大切にしており、さまざまな地域行事や学区の文化行事に参加しています。祇園祭の時期には「花きらきら」という協賛行事で二年次生の全員がお花を活けて華展を開催したり、鉾の曳き初めに参加させていただいたり、粽の授与のお手伝いをさせていただいたりしています。
  大学祭では教員や職員も学生と一体となって盛り上 げて、地域のみなさんにキャンパスにおこしいただいて、池坊学園のことを知っていただきながら、交流・連携をすすめる機会になっています。

横山 世の中がグローバル化する一方で、地域のよさや伝統が見直されています。先生は生協の理事長であり、大学の地域連携の室長もつとめられ、教員としての仕事と、「3足のわらじ」をはいてご奮闘されているのですね。

小林 行事が多いことは学園の特色でもありますので、地域の方との打ち合わせや連絡窓口の仕事がたくさんあります。それをつうじて、京都のいろいろなことを教えていただきました。
 わたしが国文学を研究しているにもかかわらず、「京都のことをこれほどまでに知らなかったのか」と、大学院のときには気づかなかったことをこちらに来て気づかされました。
 一人暮らしの高齢者の方がたとの昼食会なども企画していて、京都での世代間の交流は学生にとっても有益な機会となっています。生協のことも、立命館生協の酒井専務理事にサポートしてもらい、私にとってもよい勉強の機会になっています。

横山 池坊学園の学生のみなさんの気質や特徴は……。

小林 笑顔がとてもいいですね。いろんなものに染まっていないというか、素直で、お互いを思いやる気持ちをもっている学生が多いです。
 創立時から男女共学ですが、圧倒的に女子学生が多いですね。とくに華道文化コースは珍しいということもあり、北海道や沖縄から学びに来る学生もいます。


  学園の特色にもとづくユニークな生協事業

横山 池坊学園というと華道というイメージがありますが……。

小林 専攻は文化芸術学科と環境文化学科の2学科に9つのコースがあります。
 池坊学園建学の精神が「和と美」ですので、和を尊ぶ、おもてなしの精神が美をかたちづくり、その美がまた調和や平和、和みといった「和」をはぐくむものとなるということを学びます。
 華道と茶道は学生の必修科目となっており、伝統文化を基礎に専門技術を現代的に生かしていくことをめざしています。

横山 池坊学園の特色との関係でいうと、生協の事業・運営にどのような特徴がありますか。

小林 たとえば、トータルビューティコースという専攻科目がありますが、そこで使われるメイクセットの教材は生協の店舗で取扱いをしています。

横山 それはたいへんおもしろいですね。そのほかにもありますか。

小林 いけばな関係の品ぞろえは豊富で、生協でいけばなに関係する商品は一式すべてそろいます。お茶道具もちょっとした茶器や消耗品のようなものは取り扱っています。高価な茶碗などは別ですが。


  学生組合員数・供給高が激減するなかで……

横山 池坊学園生協は、全国の大学生協のなかでも組合員数がもっとも少ない生協だとうかがっています。

小林 2012年度の組合員数が208人でした。2009年度は380人でしたので、だいぶ少なくなりました。
 供給高も2009年度には2595万円あったのが、2012年度は1392万円でした。

横山 それだけ組合員数・供給高が減ると、生協運営のご苦労もたいへん大きいのではないかと思いますが……。

小林 学生数が減少するなかで、2012年1月に生協の食堂を閉鎖せざるをえなくなり、非常に残念でした。それにともない、学園からの生協食堂への補助もなくなりました。
 現在の最重点の課題は、購買店舗の「たんぽぽ」の品ぞろえを充実させて、楽しくて快適なキャンパスライフを応援していくことです。


  小規模生協運営の苦労

京都府生協連
横山治生専務理事

横山 購買店舗はどんな状況ですか。

小林 キャンパスが京都の街中にありますので、学生がコンビニ店を利用するという傾向があります。
 コンビニには生協よりも魅力がある商品がそろっているのかなとも思ってしまいますが、学園には経済的に非常にきびしい状況にある学生も多くいます。そうした学生が利用できる生協店舗にしていくことが重要であろうと思っています。

横山 具体的には、どのような工夫をされておられるでしょうか。

小林 低額の商品を比較的多くそろえることも大切だと思っております。たとえば70円のカップラーメンがあると聞けば、そのような商品を仕入れて品ぞろえするように努力しています。

横山 学生のみなさんの生協運営への参加は……。

小林 生協運営への参加がとくに活発だということではないのですが、学生に意見を聞けば、きちんと意見を出してくれます。
 自分の意見をいうことを恥ずかしがる学生もいますが、とくにダイエットなど気にする学生が多く、「サラダ類やスープ類など、健康を気づかえる商品を提供してほしい」という声などが出されています。こうした学生の声にもとづいて生協運営がおこなわれるというのはとても大切なことだと思います。


  短期大学がかかえる課題、生協の抱負

横山 池坊学園生協がかかえている課題は……。

小林 4年制大学と違い、2年間の学生生活では多分野の授業をうけたり、より広い人間関係をつくったりする時間的余裕がありません。
 ようやくいろんなことがわかってきたころ、やっと自分の提案したことが反映されて生協活動におもしろみを感じはじめたころに、卒業の時期をむかえるということになります。短期大学の生協としての悩みですね。

横山 これからの生協の抱負をお聞かせください。

小林 生協は学生の参加で運営されるものなので、だれかにいわれて動くというより、学生のほうから自発的にやっていけるような雰囲気づくりをすすめたいですね。
 学園に来たときにはかならず生協店舗に足を運んでもらって、友人間やいろんな人との会話のなかで「池坊学園の生協はいいよ」という声が自然と伝わっていくような運営ができればと思います。
 そうなれば地域の方がたともっとつながっていくでしょう。そのためにも、学生自身もまだ気がついていないようなものもふくめ、学生の声のなかからニーズを掘り起こしていければと思っています

横山 本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。


池坊学園生活協同組合
代表者 理事長:小林 加代子
専務理事:三浦 篤正
所在地 京都市下京区四条室町鶏鉾町491
TEL.075-352-4348
事業高 1,392万円
組合員数 208人
設立年月日 1995年6月27日
ホームページ http://ikenobo.u-coop.net/

購買店舗「たんぽぽ」