「京都の生協」No.86 2015年4月発行 今号の目次

生活協同組合生活クラブ京都エル・コープ
~細谷みつ子理事長・河﨑豊彦専務理事に聞く~

  生活クラブ京都エル・コープは1993年に設立、店舗を持たず、個人配送、グループ配送による共同購入に取り組み、「組合員が自らのくらしを自治していく」ことを大切にしている生協です。理事長と専務理事にエル・コープとの出会いやこれからの抱負などお聞きしました。



細谷みつ子 理事長

河﨑豊彦 専務理事

  豚一頭を分け合う生協?

横山 エル・コープとの出会いについてお伺いします。

細谷 「一頭の豚の肉を組合員で分け合っている生協があるよ」と聞いて、話だけでも聞いてみようと思ったのがきっかけです。エル・コープに加入する時はまず、地域の委員さんから説明を聞くことになっていたので、わたしと同じような年代の主婦の方が来られてお話され、それが新鮮で組合員になりました。

横山 一頭を分け合うということですが、具体的には。

細谷 一頭を分け合うと言うと、イメージがわきにくいのですが、豚の肉にはロース、バラ、モモなどいろんな部位があります。それを、好きな部分だけを選んで利用するのではなく、一頭まるごと無駄なく、みんなで「いのち」をいただくということです。一頭からとれるロース、モモ、ヒレ、バラなどの各部位1㎏前後を1ブロックとして各種類の部位をまんべんなくセットにしてパッケージし、登録しているグループで購入してもらいます。バラとかモモとか、だれがどの部位をいつ購入したかわかるように、ローテーション表をつくり、順番にそれぞれの部位を購入するようになっています。

河﨑 登録したら2週間に1回、四分の一頭分の各種ブロックのセットが届きます。一頭ずつ大きさが違うので、グラムあたりの単価は一定ですが、グラム数が変わります。それもすべて了解済みで購入していただくようになっています。

横山 豚肉が購入の中心になっているのでしょうか。

河﨑 そうですね。当時は豚肉が中心で組合員が増えていきましたね。豚肉を登録する際は、豚肉解体の学習会に参加してもらうことを前提にしていました。各家庭に、タテ半分に切断した枝肉を持ち込んで実施します。延べにすると500箇所で学習会をやってきました。

横山 豚肉というと関東、関西は牛肉というイメージがありますが。

河﨑 この取組みをすると豚肉が好まれるようになり、ハンバーグも豚肉100%ミンチでも十分おいしいねということがわかります。「牛肉文化」と言われる関西だからといって問題になるようなことはありませんでした。

横山 豚一頭の分け合いは今も続けているのですか。

河﨑 当初の四分の一頭分のセットはさすがに量も多いので、八分の一頭セットに途中から変更し、5ブロックとミンチが3つはいっている8パックのセットにしています。

横山 リンゴの分け合いというお話もありますね。

細谷 リンゴも箱単位を班で購入することになっており、一箱10㎏、約36玉もあるリンゴを、グループの人数で分けあっていたので、それもあってしんどくない数にしたければグループの仲間を増やそうと生協加入に取り組みました。


  新しい世界との出会い

京都府生協連
横山治生専務理事

横山 組合員として、これまでどのような活動に参加されましたか。

細谷 ダイオキシンの汚染監視の取組みとしてクロマツを指標植物とした、松葉のダイオキシン調査委員会に参加しました。月一回いろんな地域から委員が集まって話し合い、映画の上映会にも取り組み、資金集めに、バザーもやりました。会議には母のような年代の方からわたしと同じような年代の方までいろんな委員さんが参加されていて、熱心に話し合いました。ふだん、主婦をしていますと、あたりさわりのないお付き合いが多く、かんかんがくがく議論するという経験はありません。委員会では白熱してくると、「あなたはそれでいいと思っているの」と問われたり、きついと感じましたが、こんな場はめったにない機会だとも思えました。

横山 新しい世界との出会いだったんですね。河﨑専務のエル・コープとの出会いは。

河﨑 知人から、こんな生協をつくりたいと誘われて、まだ生協として姿や形のないところから関わり始めることになりました。ふだんのくらしの中から問題を考えるときに生活協同組合はすごくおもしろいなと思いました。当時、取り扱っている商品も少なく、今も取引している滋賀県のお漬物屋さんの商品の共同購入や、初代理事長の石田紀郎さんが和歌山の下津で無農薬実験園をやっていましたのでミカンの樹のオーナーを募集して、収穫したミカンを届けるなどをしながら、大阪にある他の生協の紹介や支援を受けて、徐々に、商品をふやしていきました。

横山 2013年が創立20周年でしたね。生協をつくる時に大事にしてきたことは?

河﨑 設立趣意書には、食や環境についての危機感と、人間の命の危機、さらに人間同士の関係の危機に対して組合員が主人公になって解決できるような生協をということが書かれていますし、それが原点であると思っています。

横山 消費材という言葉を使っておられますね。

河﨑 わたしたちが加入している生活クラブ連合会(※)では商品ではなく、消費材という言葉を使っています。食は本来、いのちを育むものです。 営利優先ではなく、組合員が本当に必要とする価値を生産者と消費者が創り、消費したいという考え方にもとづいていますね。

横山 他に特徴的な事業をご紹介ください。

細谷 ほかに、野菜ボックスといってボックス単位で無農薬野菜を購入する方法があります。何をどのくらい生産してもらうのかを農家さんと作付け計画から話し合い、お願いした分をそのままいただきましょうと農家さんにおまかせで届けてもらっています。無農薬で、その土地と旬に合ったお野菜が届きます。

横山 エル・コープの魅力は何でしょうか。

細谷 他の生協に比べて手間がかかる登録や利用方法ですが、そのことで実現できている価値もあります。毎月、観光バスで、長野にあるリンゴの産地を訪ね、生産の現場をしっかり見て自分たちも作業を体験するということもやってきました。リンゴ農家も廃業する方が増えている中で、わたしたちと取引きしている生産者は子どもの代へと後継者も育っています。「わたしたちは生産する消費者である」という言葉がありますが、リンゴ農園の視察交流を通してそのことを実感しています。

生活クラブ連合会
京都エル・コープは、組合員の予約共同購入と生産者との提携関係をもとに、協同の力で国内自給力をたかめようとする「生活クラブ運動」に取り組む生活クラブ生協のひとつであり、全国の生活クラブ生協があつまってつくっている生活クラブ生協連合会に加盟しています。(2007年加盟)。

  共に生きることを大切に

横山 これからの課題についてお聞かせください。

河﨑 地域づくりの政策をきちんと持って臨みたいと考えています。5次中期計画の議論の中で、とくに福祉について検討し、近いうちに事業として立ち上げたいと思っています。

横山 昨年は物流センターの屋根に太陽光パネルを設置したとうかがっております。

細谷 山科にある東センターの屋根に太陽光発電のパネルを設置しようと組合員が「パネルあげ隊」というグループをつくり、組合員出資金の増強を募って設置しました。これも原発にはノー、自分たちでできるところからという趣旨だったのではと思います。

横山 昨年、理事長に就任されたのですが、こんごの抱負など、お聞かせください。

細谷 社会全体がくらしにくさを増しているような気がしています。働き続けることができなくなったり、ひきこもりの方を抱えていたり。みんなが安心してくらせるように、共に生きるということが大事になっています。その一端を担えるようになればと思っています。

横山 本日はお忙しい中、ありがとうございました。


生活協同組合生活クラブ 京都エル・コープ
代表者 理事長:細谷みつ子
専務理事:河﨑 豊彦
所在地 京都市南区久世上久世町161番地
TEL.075-934-7370
事業高 10億8,152万円
組合員数 5,942人
設立年月日 1993年9月22日
ホームページ http://kyoto.seikatsuclub.coop/