「京都の生協」No.91 2017年1月発行 今号の目次

京都橘学園生活協同組合
~堀妙子理事長に聞く~

京都橘学園生協は、2017年に創立40周年を迎えます。2016年には、あたらしく響友館という建物の1階にショップ(購買・書籍・生協本部)と2階に新食堂をオープンしました。  今回は2016年度に理事長に就任された、京都橘学園生協・堀妙子理事長にお話をうかがいました。大塚正文専務理事にも同席していただきました。
(聞き手:京都府生協連合会専務理事・高取淳)

高取 大学に生協ができた経過や堀理事長と生協のかかわりについておしえてください。

 大学は1967年にこの山科の地に開学されましたが、山の中腹にキャンパスがあり、当時はまだ学生数も少なかったので学内の活性化のためにも生協を作ろうと大学側から要請があったのが当生協の始まりと聞いています。当初は教室の一角を使った購買部から始まり、大学が大きくなるにつれ学生数がどんどん増え、生協も一緒に大きくなってきました。

わたしは2005年に京都橘大学にきてからずっと組合員にはなっていました。2015年度に監事を1年して、今年度理事長を引き受けました。わたしが専門とする看護の教員は生活に密着しており、そういう面では何かお役に立てることがあるのではと思っています。

  未来につながる生協づくり

高取 2015年度から2016年度にかけて新店オープンに加え、店舗の改装もされたそうですが、評判はどうですか。

 クリスタルカフェを先ほど見ていただきましたが、ちょっと洒落てませんでしたか?

大塚 実はあのクリスタルカフェは都市環境デザイン学科のゼミで、授業の一環として学生たちがデザインし、大学や建設会社にプレゼンをした上で、その内容をかなり忠実に作ってもらいました。授業と事業の一体化というか、学生の学びが実際に形になる良い取組みになったと思います。

高取 新店オープンは大学改革の一環でもあったとか?

 食堂が狭く昼食が食べられないという学生からの苦情が多かったのです

大塚 急遽、大学から響友館を作るから中身を考えなさいと言われました。食堂が手狭なことが解消されるということと、学内の中心地に店舗ができるので大変ありがたいお話でした。今まで利用してくれていた組合員の剰余の蓄積が未来の組合員のために使えるのは非常によかったと思います。

高取 響友館のショップの特徴は?

大塚 お店の形状がブーメランのような形になっており、全体の見通しは良くありません。そこで、入口を入った正面に、皆さんの要望を何でも受けますという気持ちで楕円形のカウンターを配置しました。ホテルのカウンターのような形になりました。書籍コーナーには、少し余裕の空間を設けていますが、ここはさまざまな催事に使えるように空けています。

購買ではパート職員がとても頑張っていて、関西北陸事業連合のショップ部門の企画で週販(1週間にどれだけ売れたか)で、結構上位に入るなど企画には非常にこだわっています。

 この前のポッキーの日(11月11日)には、チョコレートをきれいに並べて売っていましたね。朝から学生が大きなポッキーの箱を持って歩いていました(笑)。

大塚 実は困っていたことがありまして、おにぎりなんですが、24時間営業ではないので、どうしても売れ残りが廃棄になってしまいます。もったいない上に、分別のために手間と時間をかけてビニールと残飯を分けている。どうしたものかと思っていると、パート職員から「お茶漬け」にしたらどうかというアイデアが出ました。お湯は給湯器があるので、おにぎりとカップ+お茶漬け海苔のセットを購入してもらい、ちょっと小腹がすいたときに温かいものを食べてもらおうという企画になりました。「おに茶漬け」として販売を始める予定です。喜ばれて廃棄も減る。一挙両得だと思っています。


響友館ショップカウンター前で
  地域への貢献

高取 地域とのつながりを大事にされているとお聞きしていますが。

大塚 「山科醍醐こども広場」というNPO法人があり、母子家庭やひとり親世帯のこどもたちを預かって、勉強したり、お風呂に入ったり、食事をしたりする活動をされています。そちらに寄付をするような活動ができないかと「京都地域創造基金」から提案され、理事会・学生委員会で時間をかけて検討してきました。実際に学生委員が「山科醍醐こども広場」にボランティアに行ったり、事務局の方から活動の内容を伺ったりしていく中で、こどもたちの大変な状況を知り、わたしたちも何か手伝えないかと検討してきました。1日千円あればご飯を食べてお風呂に入れるとのことなので、直接の寄付というより、日々の食堂利用で寄付が集まるように「寄付金付きメニュー」でいくことになりました。

 過去のメニューをリバイバルして、そのメニューを食べたら寄付がされる仕組みになっています。また、購買でも寄付金付きの焼きたてパンを販売しています。

大塚 2014年11月から始めて2016年3月までで、9万7420円を寄付することができました。この方式を、コンビニコーヒーにも適用し、「ユニセフ」と「山科醍醐こども広場」に寄付ができるようにしています。いずれはこどもたちとの交流もしていきたいと思っています。

高取 この活動は学生委員が中心に取り組まれているのですか?

 実は以前から児童教育学科の学生たちが、「山科醍醐こどもの広場」のボランティアとしてかかわっています。

大塚 この取組みを、京滋・奈良ブロック(当時)の学生委員会の集まりで報告したところ「生協でもこんなことができるんだ」という感想をもらいました。学生たちに何らかの影響を与えることができたかなと思います。また、2014年度から「京都市だいご学園(身体障害者福祉センター)」で作っているドーナツも販売しています。


堀妙子理事長(右)と大塚正文専務理事
  学生たちの大きな力

高取 学生委員が活発に活動されていますが、学生委員も含めて今の学生はどのような特徴がありますか?

 学生委員、特に中心になって企画している学生はしっかりしていると思います。わたしは普段から学生と接していますが、少し雰囲気が違うような気がします。

大塚 多くの大学生協で、新入生をサポートする活動が活発に取り組まれています。当生協でも「学生委員会」と「PC講座サポートスタッフ」からメンバーをつのり「新サポ」を結成して活動しています。これまで生協職員が作っていた案内冊子をサポーターたちが作っています。活動をすすめる上では、サポーター(学生)自身が自分の実感として「これが必要だから提案している」という思いを大事にして活動してもらっています。ここがしっかりと各自の腹に落ちていないと心からの提案になりません。多くの大学生協が大切にしている考え方です。今年の「新入生・保護者説明会」から、新入生が困らないように「10のアドバイス」というものを提案しています。学生たちは納得するとどんどん進んでくれますので頼もしいです。

 大学自体もそんな感じですね。オリター制度(オリエンテーション・リーダー)といって、上級生が新入生をお世話するという風に基本的になっています。先輩たちが、新入生に教えるのに慣れていますね。

大塚 生協はみんなで出資して良い「モノ」を安く提供する仕組みから始まったと思います。「モノ」からスタートしましたが、「モノ」が溢れる時代には、なぜその「モノ」が必要なのか、何に使うのかという「コト」の提案がないと選択されません。多くの大学生協でこのような考え方を基にした活動が広がっています。「コト」を大切にした事業の組み立ての可能性はいろいろあると思っています。

 いろんなものが整ってきたこれから、これをどう活用していくのか、組合員さんのお役に立てていくのかということですね。

高取 本日はお忙しい中をありがとうございました。

京都橘学園生活協同組合
代表者 理事長:堀 妙子
専務理事:大塚 正文
所在地 京都市山科区大宅山田町34
TEL.075-571-7505
事業高 5億8,087万円
組合員数 5,567人
設立年月日 1977年12月14日
ホームページ http://www.tachibana-coop.jp/
(2015年12月末現在)