「京都の生協」No.92 2017年4月発行 |
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京都府立医科大学・府立大学生活協同組合
~東あかね理事長に聞く~ |
当会広報誌、2001年9月号№43の対談「見直そう『たべるたいせつ』」にご登場いただいた東あかね教授が、京都府立医科大学・府立大学生協の理事長になられました。 生協を通して旺盛に食育活動をされている東理事長を訪ね、お話をうかがいました。末廣恭雄専務理事にも同席していただきました。
(聞き手:京都府生活協同組合連合会専務理事・高取 淳)
![]() (左から)末廣恭雄専務理事、東あかね理事長、小脇正下鴨ショップ店長も一緒に |
高取 今期理事長に就任されましたが、これまでの生協とのかかわりや理事長になられたきっかけについてお聞かせください。
東 地域生協に関しては、幼いころに住んでいたところが買い物に行くのにとても不便な場所だったこともあり、早くから加入していました。京都府立医科大学・府立大学生協(以下:府医大・府大生協)に加入したのは、1975年に京都府立医科大学(以下:医科大学)に入学してからです。府医大・府大生協の役員としては、2010年から2年間副理事長に就任したのですが、その後2012年から2014年3月まで京都府立大学(以下:府立大学)副学長になりましたので、一旦、生協役員から退任し、2014年4月からまた副理事長を2年間して、今回理事長になりました。
二つの大学に一つの生協 |
高取 府医大・府大生協についてご紹介ください。
末廣 1958年に医大生協が設立され、今年で58年になります。通常、大学生協は学生と教職員が主な組合員ですが、医大生協は病院地区での営業もしているというのが特徴です。医科大学で生まれた生協が府立大学に生協ができるときに支援をして、1962年に統一するための総代会を開催し、府医大・府大生協になりました。大学は当初、別法人だったのですが、今は、一法人二大学の形態の独立法人です。生協の方が先にひとつになったという訳です。
東 患者さんの組合員がおられ、入院生活を支えるというところから始まっているのが、他の大学生協と違うところです。
末廣 両方の大学がお互いを尊重しあいながら責任をもって運営してきました。
高取 二つの大学に一つの生協。大変珍しいですが、そのことで強みであったり、逆にご苦労などはあるのでしょうか?
末廣 同じ学生でもかなり違います。医学部系の学生と文系理系の学生が一緒に会議をしているというのはあまりないのですが、2年前から文部科学省の大学間連携事業で、三大学教養教育共同化の取組みが始まり、府立大学のキャンパスに医科大学の学生と京都工芸繊維大学の学生が一緒に学ぶようになったので、お互いの学生が近づけるようになりました。 一回生の時に同じキャンパスに居るので、同じ生協の組合員としていろんな取組みが進めていければ良い、という目標は持っています。
東 三大学の学生が一緒に学び、幅広い教養を皆がつけるということはとても良いことだと思っています。
高取 2016年度は店舗の移転や、損益構造改革を課題とされています。
末廣 店舗の移転も含めてこの2年間取り組んでおり、損益構造は大きく変わっています。一番のポイントは今までは組合員サービスを重視して、損益的に厳しいものもやっていたのですが、整理しました。そこで出た利益は組合員のために投資をしようと、利用施設をリニューアルしていく取組みを進めています。
こだわりの商品づくり |
高取 地産地消にこだわった商品活動に取り組まれています。地域との連携にもつながる取組みだと思いますが、どのような内容でしょうか?
末廣 京丹後市のお米を生協の食堂で長く使っていて、毎年、農村体験ツアーを実施しています。その活動の中から「大学京あられ」という商品が生まれました。
東 袋に当時の府立大学の学長に書を書いてもらい、雅印(がいん)は医科大学の名誉教授に作ってもらい、絵は学生に書いてもらいました。「京あられ」というネーミングも学生が考えた、こだわりの商品です。文学部の学生はこの書を見たら、ありがたがって袋が捨てられないらしいです(笑)。
末廣 5年過ぎてもまだ作り続けられています。いい商品は長続きをします。「京たんごぼたん・もみじ比治の里(ひじのさと)」というカレーは、獣害被害の実態を見て、鹿やイノシシを食肉として何とか利用しようと大学内で議論しながら開発、商品化しました。
東 京丹後市の解体施設で解体された肉を社会福祉法人でレトルト加工しており、京丹後市の鳥獣被害対策と障害者の方がたの就労支援にもなっています。「有害鳥獣をおいしく食べて京都の農業に貢献しよう!」がスローガンで書いてあるのですが「これがあると食べる気がしない」と言われることもあります。森を守り農業を守るため、このスローガンがないと意味がないのですが…。
食生活をサポート |
高取 学生生活アンケートを実施されたとお聞きしています。今の学生の食生活の特徴というものはありますか?
東 4~5年前から週一回、朝食会をやっていて、昨年まで続けていました。学生は100円、教職員は400円です。食材は宮津のアカモクや鰆、府立大学の農場の野菜を使って、「朝みんなであつまってご飯を食べよう」と呼びかけました。朝食を食べない学生が20%程度いまして、週2回朝食会に参加させて朝食の摂取習慣がつくか、卒論研究でその効果を検証しました。しかし、残念ながら習慣はつきませんでした。ところが予期しない面白い効果があったのです。朝食会で朝ご飯を食べた学生は、昼ご飯を食べるようになったんです(笑)。体にリズムがついたということですね。ただこの企画は、朝食を50食作ることになっていたので、どうしても50食をさばかなければならなかったので、独身の男性を探しては朝食券を買ってもらいました。とても喜ばれましたが大変でした。長岡京のタケノコを食材にしたくて、学生と一緒に掘りに行き、リュックに背負って持って帰ってきたこともありました。
末廣 お金をかけずに食事をしようという人がどうしても多かったのですが、本格的にミールカード(※)が普及してきて、食事をバランスよく取るようになり、小鉢の利用数が増えました。一緒に食べる友だちも影響を受けて、全体的に利用数が増えている状況になっています。席数も増やし、たくさんの組合員にバランスの良い食事をとってもらえるような方策を2年くらい続けています。
高取 これからの府医大・府大生協がめざす姿について教えてください。
東 学生のためになる食堂として頑張っていきたいと思っています。生協の食堂で健康的で安全で経済的でおいしい食事を提供していきたい。食堂で食生活の相談やアドバイスができるような機能を果たしたいと思っており、(公社)日本栄養士会が推進している栄養ケア・ステーション認定制度モデル事業という制度を利用しようと考えています。これは厚生労働省が推進する「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」の目標に掲げている「健康づくりに関して身近で専門的な支援・相談が受けら れる民間団体の活動拠点づくり」の一環で、生協の食堂も健康づくりに貢献できればいいなと思っています。
高取 本日はお忙しいなか、ありがとうございました。
※ミールカード 生協食堂年間 利用定期券(前払い)
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