「京都の生協」No.94 2018年1月発行 今号の目次

同志社生活協同組合
~青木真美理事長に聞く~

同志社生協は、同志社尋常中学教員安部磯雄先生(※)と学生達により、1898年(明治31年)に創設されてから創業119年を迎えました。「日本における最初の大学生協」と言われています。現在では大学、女子大学、岩倉・香里の中学高等学校で、店舗を展開しています。総代会は学生委員会中心の運営になり、今年度は実出席で成立をすることができました。さまざまな分野での学生委員による活発な活動がおこなわれています。
今回は同志社生協・青木真美理事長と、堂免裕子専務理事を訪ね、お話をうかがいました。

(聞き手:京都府生協連合会専務理事・高取淳)

高取  同志社大学と同志社生協の概要についてお聞かせください。

堂免 1957年に同志社大学消費生活協同組合として設立され、97年に同志社女子大学などの事業が増え、同志社生活協同組合と改称しました。

青木 大学は、今出川と京田辺にキャンパスがあるのですが、2013年に、文学部、法学部、経済学部、商学部の1、2年生が京田辺から今出川に移ることになり、8千人ほどが移動しました。そのため、大幅に今出川の収容人数が多くなりました。生協も店舗を組み替えたり、京田辺でも店舗のレイアウトを変えるなど、当初は苦労しました。今出川では学生数が多くて、今でも昼食時の混雑の問題があります。食堂に近い教室をお昼休みに開放していただき、そこで食事をしても良いようにしてもらっています。

堂免 あとはテイクアウトメニューを増やしたりして、工夫をしています。逆に京田辺にはたくさんお店があったのですが、効率のいい運営をしないと赤字になりますので、一旦そのタイミングで整理しました。私は今年度の総代会から専務理事に就いたのですが、以前から、教育研修はしっかりされているなと思っていました。生協の努力ももちろんありますが、事業連合が合併(事業統合時代含む)したことによる効果も大きく、飛躍的に経営改善が進みました。

高取 これからの課題をお聞かせください。

堂免 経営再建第二中期計画で成果を生みましたが、残された課題を実行にうつしたいと思っています。当面は、食堂では引き続き安定した利用ができること、購買のところはコンビニと競合しているのでどう差別化をしていくかが課題です。特にお昼休みに混雑するので、混雑緩和に力を入れていきます。電子マネーやテイクアウト、商品の品ぞろえの仕方にも工夫しています。なるべく早く買い物がすませられる仕組み作りをしています。また、経営が悪化した当時は業績を回復するためにトップダウンが強かったようでしたが、今は緩やかに組合員参加を促し、主体的に組合員が参加する組織だというところを強めていきたいです。

  生協とのかかわり

高取 青木理事長は2013年に就任されましたが、生協とのかかわりについてお聞かせください。

青木 私は商学部なのですが、商学部の先生方が何人か生協の理事をされていて、その方がたからのお声かけがあり、2011年に理事になりました。勧められた先生方は次期理事長の心づもりだったようです。前任の大鉢理事長が退任されて引き継ぎました。経験が無いので不安もありましたし、ちょうど同時期に入学センター長という入試の責任者にもなってしまい、当初は生協にもご迷惑をおかけしたんじゃないかと思っています。
私は出身が早稲田大学なので、大学にいた時は安部球場が早稲田のキャンパスにあり、安部磯雄先生つながりというご縁も感じています。

  元気な学生たち

高取 ここ数年、生協の学生委員の活動が活発になってきたそうですが。

堂免 特徴的なのは新学期の新入生説明会です。新入生とその保護者のべ2千人以上の参加があり、大学生活や入学準備などを、学生自身がプレゼンテーションをおこないました。説明会は他にも複数回実施しました。また、いくつかチームがあり、お店の活動、広報誌作成、共済のチームなどが活動しています。

青木 学生委員会の人数がすごく増え、活動も活発になってきています。教職員との関係では、他の大学生協は教職員が企画を立てて活発に活動されているようなので、そんな風になっていけば良いと思っています。もう一つは教職員組合というのがあって、何か協力ができればいいと思っています。私も以前は教職員組合の幹事長をしていたので。

高取 学生委員は何人おられるのですか?

堂免 今出川で100人、京田辺で30人くらいです。

青木 10年くらい前は10人ほどだったと…。

堂免 危機的な状態でしたが、少ない人数で続けているうちに、自分もそういう活動をしてみたいという学生が出てきて、出来るところから少しずつ活動してきました。説明会など活発になってくると、それを見てやってみたいという学生が増えてきました。

青木 これからは「モノを売るのではなく、コトを重要視しよう」と思っています。学生生活のさまざまなシーンで役立つ情報を提供し、学生と一緒に考えていくことを大事にしています。

堂免 この間も学生と話をしていて「推薦入学は決まったけどもっと早くに教習所の案内がもらえていたら、生協で申し込んだのに…」という会話があり、今作っている冊子のスケジュール、遅いんじゃないの?と気付くのです。そういうことをつなぎ合わせて、話し合いながら取り組んでいます。

高取 声から事業を組み立てるのは生協の原点ですね。

堂免 今はスマホ世代なので、キーボードが打てない、パソコンが使えない子が増えています。メールもラインと同じような使い方で用件だけ送ってくるなどがあるので、基礎的なパソコンの使い方を教える場が必要と実感しています。

青木 スマホで文章を作って、それをそのままプリントアウトして…そうすると自分の名前もタイトルもないレポートが出てくるので、そこから教えないといけないんです。

高取 大学生協ではそこまでサポートされるのですね。

青木 ある意味ではそれが、ビジネスチャンスです。存在価値が発揮できます。

堂免 学生委員会に入ってくる新入生は、一緒に活動する中で先輩だけでなく職員と関わることができ、ノウハウが学べます。3回生になると就活などで忙しくなり、委員会としては蓄積していくのが難しいです。どこの大学も同じ状況だと思います。これからもいろいろと職員のところでサポートしていかないといけないと思っています。

高取 職員も学生たちと一緒に活動して、元気をもらうことがあるでしょうね。

堂免 卒業の頃には「立派になって…」と感慨深い思いになるようです。学生も生協の購買や食堂のパートさんと話すのを楽しみにしているようで。ちょっと保健室みたいな(笑)。


今出川キャンパス内の重要文化財「彰栄館」前で、
青木真美理事長(左)と堂免裕子専務理事
  期待される生協へ

高取 食堂では100円朝食も取り組まれているということですが。

堂免 結構人気があります。同志社大学では、毎週火曜日に実施していて、同志社の卒業生の団体である『同志社校友会』が財政負担をして実施しています。2016年度は年29回展開し、毎回150人の利用がありました。都道府県の特徴を出したメニューを出してほしいとの声もあり、メニューも工夫しています。100円朝食は同志社女子大学でも展開しており、同窓会や学生会の援助を得て、月~金毎日実施しています。

高取 今後の抱負や関心ごとをお聞かせください。

青木 累積の赤字は着実に返済していければと考えています。学生の気質や、持っている資質や技能は以前と変わってきているので、そこをよく見極めて、例えば学生委員会の活動の中でうまく育てていきたいと思います。学生生活に意義深いような情報等を提供できる生協になりたいと思っています。

高取 本日はお忙しい中をありがとうございました。

(※)安部磯雄 (あべ-いそお、1865年3月1日生まれ)。日本の社会主義者。 キリスト教的人道主義の立場から社会主義を活発に宣伝し、日本社会主義運動の先駆者であった。同志社大学教員の時に、同志社学生消費組合を設立。また、日本における野球の発展に貢献し、「日本野球の父」と呼ばれる。早稲田大学野球部創設者でもある。

同志社生活協同組合
代表者 理事長:青木 真美
専務理事:堂免 裕子
所在地 京都市上京区烏丸今出川玄武町601
TEL.075-251-4430
事業高 46億9,790万円
組合員数 4万1,432人
設立年月日 1957年11月18日
ホームページ http://www.doshisha-coop.com