「京都の生協」No.97 2019年1月発行 今号の目次

生活協同組合コープ自然派京都
~坂本真有美理事長に聞く~

2007年の設立から11年を経て、昨年5月には配送センター兼事務所を新しく久御山町に移転されました。事業・組合員拡大が二桁伸長と、着実に支持を伸ばしている生協コープ自然派京都。
今回は生協コープ自然派京都・坂本真有美理事長と、柴垣千春専務理事を訪ね、お話を伺いました。

(聞き手:京都府生協連合会専務理事・高取淳)


坂本真有美理事長(左)と柴垣千春専務理事(右)

高取 設立から11年が経過しました。設立時からお二人はそれぞれ理事長、専務を務められ、広報誌・京都の生協でも設立間もないころにお話を伺いました。(2008年4月)。この11年を振り返られて、それぞれ感想などをお聞かせください。

坂本 組合員さんが1万人を超えましたが、新鮮な気持ちで今も活動しています。設立当初から残っている理事は、私と柴垣専務だけです。人が入れ替わってもみなさんの力が蓄積され、「理事会」として成長しており、新しい理事も生協を理解し推進していく力をつけて下さっていてとても頼もしく思っています。2階に組合員活動室ができたというのはとても大きくて、月一回の理事会は必ずここでおこなっています。京都府生協連の理事会に参加させていただくようになって、活動が広がり、学びも深めることができ、地域とつながっている生協の果たす役割はすごく大きいと実感しています。その良さを広げていく一助になれれば良いと思っています。

東日本大震災とそれに続く福島第一原発の事故が起きて、実際に避難された方はもちろんですが、関西に住む私たちにとっても考え方や生活が変わったことが大きな出来事で、生協にとっても大きな転換になりました。

柴垣 設立当時は何もわからずに始まったのですが、京都府生協連やコープ自然派事業連合などから学びながら少しずつ成長してきました。 組合員活動もゼロからのスタートで手探りだったのですが、設立5年後くらいから、商品供給だけではなく運営にも積極的に参画してくれる組合員さんが少しづつ増えている手ごたえを感じられるようになりました。

高取 最初の5年くらいは、組合員活動を展開するには、かなりご苦労されたのですか?

柴垣 イベントを企画しても人が集まらず開催できないこともありました。 最近は、イベントをお知らせする通信もよく見てもらえており、発行する側も手ごたえを感じられるようになり、生協としても成長したと感じます。

  伝え方をひと工夫


新しい組合員活動室

高取 生協コープ自然派京都はここ数年、事業・組合員拡大で二桁伸長されています。新しい組合員さんを広げる工夫も色々されていると思いますが、いくつか取組みをご紹介ください。

柴垣 一人当たりの利用がここ数年伸びています。商品政策には当初より力を入れています。加入のお誘いをするのに以前は戸別訪問が中心でしたが、4~5年前から戸別訪問スタッフの採用が難しい状況が続いています。今は、組合員紹介を中心とした拡大に力を入れています。

坂本 知っていただきたいことすべてをカタログでお伝えすることは難しいので、それを補うことに力を入れています。テーマごとにパンフレットを作って、大事にしていることを分かりやすく伝える工夫をしており、組合員さんも口コミで広げるときにパンフレットを使って伝えていただけるようにしました。Facebookやインスタグラムでも発信しています。

高取 わかりやすく伝える工夫は大事ですね。その他にもありますか?

柴垣 プチパ―ティに力を入れています。組合員1人がお友だちを2人誘って、家でパーティをしてもらう。数種類のメニューの中から選んでもらい、専任の職員が商品のこだわりを話しながら調理をして、試食してもらう取組みです。組合員拡大が目的ですが、参加している組合員さんもいろんな商品について生協コープ自然派が大切にしている事を知ることができます。実施する料理や調理器具などは、非日常的な演出を考えたおしゃれなものにしています。メニューは季節によっても変えています。昨年は174回開催しました。168人が加入され、組合員さんを含めた参加者は396人でした。

高取 注文書や案内を見てもおしゃれに作られていますね。

坂本 かなり頑張って変えてきています。またホームページを充実するように心がけています。今年に入ってから、野菜などの欠品の理由が分かるように、畑のようすを取り入れたり、商品に関する物語を載せたりしています。

柴垣 そのほかには、マルシェに出店して「ミニトマトすくい」を実施するなど、工夫しています。今後は、イベントにキッチンカーで出向いてアピールできたら良いなと考えて、今、キッチンカーの製作をすすめています。大阪や兵庫、四国などではすでに動き出してます。

高取 2017年9月には事業エリアを京都府全域、滋賀県大津市まで広げられました。現在の状況をお聞かせください。

柴垣 滋賀県大津市には330人の組合員がいます。週4日火曜日から金曜日に配達しており、一日だいたい40万の供給高です。大津市でも南のエリアが中心で、湖西地域は現在配達エリア外です。ニーズがあると思うのですが、配送体制が整わず、今後の展開をどうするか、思案中です。配送員の確保が最大の課題です。

  組合員が自ら考える

高取 商品政策で大事にされている点についてお聞かせください。

坂本 いろいろありますが、私の中で一番大事だと思うのは情報公開です。放射能検査の情報などをきちんと公開して、組合員さんが学んで選択できる目を持ってもらうことを大事にしています。学習会をおこなって、組合員さんと共に考えていく。また、添加物のことや農薬のことを生産者と対話して一緒に学ぶようにしています。

高取 学習会を企画する、準備するという作業はどなたがされるのですか?

坂本 組合員や理事です。中期計画を立ててビジョンを決めています。今期は「未来と平和」「暮らしとつながり」「食と環境」です。それにもとづき一年間の活動方針をきめて組合員と理事が意識しながら活動しています。

高取 さまざまな分野の学習会がありますが、参加が多い学習会は?

坂本 GM(遺伝子組換え)の学習会は当初は参加が少なかったのですが、原発事故後、食の安全への関心が高まり、すごく増えました。事故のあとはもちろん放射能の学習会への参加も多かったです。農産やメーカーなどの生産者を招いた学習会も参加が多いですね。

  みんなで活動を広げたい

高取 これからの生協コープ自然派京都の課題や計画についてお聞かせください。

坂本 ここ数年、地元でお米の生産者を探しています。「田んぼの生き物調査」をしており、農薬や化学肥料に頼らない田んぼにはたくさんの生きものが棲んでいることを、生産者と一緒に田んぼに入って調べ、生きものと、農業と、食べもののつながりを実感する取組みです。そこで田んぼ生き物調査米を作ってくださる生産者を探しています。

柴垣 リサイクルやリユースの取組みについての課題は自覚しながらも進んでいませんでしたが、今年から事業連合で古紙圧縮梱包機が導入され、商品カタログのリサイクルが実現しました。瓶のリユースも組合員のみなさんからの要望が多いのですが破損の心配など、難しい課題があります。組合員活動と連携しながら京都ならではの「できる事」を考えていきたいです。組合員活動室も出来たのですが、交通の便の良い、組合員が集まりやすい拠点も必要と思っています。何よりも今の現状を改善していくには人の確保が課題です。そのためにも働きやすい環境を整えていきたいと考えています。

高取 本日はありがとうございました。

生活協同組合コープ自然派京都
代表者 理事長:坂本真有美
専務理事:柴垣 千春
所在地 京都府久世郡久御山町市田新珠城9
TEL.0774-74-8401
事業高 14億9,311万円
組合員数 1万223人
設立年月日 2007年9月3日
ホームページ http://www.shizenha.ne.jp/kyoto/